上海国際博覧会 パビリオン放送設備

特集

中国2010年 上海国際博覧会 パビリオン放送設備

課題・解決のポイント

世界が注目する上海万博で、安心・快適な音環境を実現するTOAの放送システム。

万博史上最多となる246の参加国・地域、国際機関、7,000万人の来場者を見込む、上海国際博覧会(以下、上海万博)。訪れた全ての来場者が、会場内を常に快適で安全な状態で見学できるためには、的確な案内放送や万が一の際の確実な避難誘導放送が欠かせません。TOAは、上海万博のメインパビリオンとなる中国館をはじめ、テーマ館や万博センター、日本館など、さまざまな施設に合わせた放送システムを構築し、スムーズな会場運営をサポートしています。

納入時期 2009年~2010年
納入先 上海万博実行委員会 様
採用背景 中国国家の威信をかけた世界規模のイベント「上海万博」の大規模屋内空間で、円滑な運営を約束する放送設備、システムの実績とノウハウ、品質が求められた。

課題

  • パビリオン内部は天井も高く、大空間。どの場所にいる人にも確実に放送内容を聞かせたい。
  • 建物のデザイン構造上、スピーカーの設置場所が限定された中での音響設計。
  • 国家の威信をかけたプロジェクトの運営において、失敗の許されない万全のバックアップ体制。

解決のポイント

  • 大空間の音響特性を測定し、明瞭性確保の妨げとなる共鳴を検出、抑制する音場補正システムを提案。
  • IPネットワーク対応で分散配置が可能な多元業務用放送設備を活用。
  • 故障検知システム、CPU診断機能などを搭載した非常用放送システムを導入。
  • 来場者の増減など周囲の騒音変化を検知し、アナウンスやBGMの最適音量を自動で調整。
  • ねらったエリアに的確に音を届けることが出来るスピーカーシステムを設置。
  • 特約店、工事会社との信頼関係で、建設設計段階から音響設計に参加。

導入システム・機器

多元型放送設備のスマートマトリクスシステム「SX-2000シリーズ」は、通常時には館内BGM放送や案内放送を必要なエリアに行い、火災などの緊急事態が発生した場合は、全てのエリアで避難誘導放送を優先して放送することが出来ます。特に中国館では、「CobraNet※」規格のIPネットワークを活用した分散化システムにより、放送状態の確認や放送エリア選択などの操作がリモートマイクで簡単に行えるようになっています。万が一、放送システム上の機器に異常が発生した場合にも、故障検知システムによって異常状態をリモートマイク上で確認できます。
また、屋内大規模空間となるテーマ館では音場補正システムとして、デジタルオーディオプロセッサー「DP-K1」を導入。予め空間の音響特性を測定し、明瞭性確保の妨げとなる共鳴を検出、抑制しています。さらに、来場者数の増減に応じて生じる騒音の大きさによって、放送の音量を自動的にコントロールできるデジタルアンビエントノイズコントローラー「DP-L2」も放送システムに組み込んでいます。
スピーカーにおいては、それぞれの施設の空間特性や使用用途を考慮し、さまざまなスピーカーを導入することで、上海万博の来場者に対して確実に放送を行っています。中でも、音の指向制御が可能で、遠方までのクリアな音声伝達に優れたコンパクトアレイスピーカー「HX-5シリーズ」が活躍しています。

  • 中国館のシステム図
  • テーマ館のシステム図

Point

  • 放送システムの分散配置が可能
  • IPネットワークで集中制御、放送系統別も可能な多元業務用放送設備
  • パソコンで放送状況を確認、操作
  • 故障検知システムで異常をリアルタイムで確認
  • 混雑に合わせて、放送音量を自動的にコントロール
  • 屋内の大空間で起こりやすい共鳴を抑え、明瞭性を確保
  • 指向性制御可能なスピーカーで明瞭な拡声を実現

お客様が語る「採用のポイント」

  • 大規模な空間・施設に最適な放送システムを設計
  • 特約店や建築会社との信頼関係
  • 空港やオリンピックなどの大型施設での実績

※ CobraNetはCirrus Logic社の商標です

採用決定ストーリー

IPネットワークの活用による分散配置と、巨大な空間特性に合わせた音響設計

屋内大規模空間でも安心・快適な放送システムを実現。

  • 上海万博の中国館やテーマ館などのメインパビリオンは、世界最大規模の屋内施設になります。中国館は非常に天井が高く、4本の柱状構造物への放送設備の分散配置が必須。さらに、スピーカーの設置場所が限定されるなど、乗り越えなければならないさまざまな音響設計上の課題がありました。これらの課題を全てクリアし、開催期間中に7,000万人を見込む来場者に向けて、いつでもどの場所にも最適の音量で確実に案内放送や避難誘導放送を届けられる音環境を構築しなければなりませんでした。そのため、建築設計の段階から建設業者とも綿密な打ち合わせを重ね、どのような種類の音響機器をどう設置するかを検討していきました。

    上海万博のメインパビリオン、中国館
上海万博の各種パビリオンに最適なシステムを提案。

IPネットワーク活用による分散配置・集中制御システムを構築。

  • ■中国館

    中国館は、大きな屋内空間を4本の柱状の建築物で支える構造になっています。それぞれの柱部分に放送システムを分散配置し、「CobraNet※」規格のIPネットワークを活用して、中国館全体の集中制御と、個別のエリアでの放送が可能なシステムが要望されました。そこでTOAでは、スマートマトリクスシステム「SX-2000シリーズ」による非常・業務用放送設備の集中制御、分散配置をご提案しました。
    中国館では放送系統を6系統に分け「SX-2000シリーズ」を配置。館内に敷設されたIPネットワークを通じて集中制御、またはそれぞれの系統ごとに放送することが出来ます。どの音源をどのエリアに放送するかを、パターンとして記憶することも可能。また、音源ごとに優先度を設定することで、例えば緊急時には避難誘導を全ての放送に優先して放送します。

    中国館の周囲に設置されたスピーカー

明瞭性確保の妨げとなる共鳴を抑制し、明瞭で聞き取りやすい音空間を構築。

  • ■テーマ館

    テーマ館は、横幅144m×奥行189m×高さ23mの大展示場と、横幅108m×奥行189m×高さ9mの2つの巨大な空間で構成されています。一般的に向かい合った平面で構成された屋内施設は、音が反射を繰り返し、減衰しにくいため、空間内の音声の明瞭度が低下しやすくなります。さらに今回は、スピーカーの設置場所が非常に高い天井に限定された中で、いかに大空間のどのエリアでも均一で明瞭性の高い音を届けるかがポイントになりました。

    具体的には、室内音響の状態を専用のソフトウェアでシミュレーションし、スピーカーの種類と使用する台数を設計。さらにデジタルオーディオプロセッサー「DP-K1」により、この空間の音響特性を測定して、明瞭性確保の妨げとなる共鳴を自動的に計測し、音場を抑制することで、明瞭で聞き取りやすい放送が可能となりました。また、デジタルアンビエントノイズコントローラー「DP-L2」の導入により、来場者数の増減に応じて生じる騒音の大きなエリアや時間帯にはスピーカーの音量を上げ、人が少なく騒音が小さい場合には音量を下げるなど、放送の最適音量を自動的にコントロールできる放送システムとなりました。

    テーマ館
カバーエリアに応じたスピーカーの指向性制御で、明瞭な拡声を実現。

IPネットワーク活用による分散配置・集中制御システムを構築。

中国館やテーマ館ではコンパクトアレイスピーカー「HX-5シリーズ」が採用されました。HX-5シリーズは、これまで困難だった低音の指向性制御まで可能なスピーカーシステムで、特に残響時間の長い空間などにおいて、明瞭な音を確実に届けます。上海万博では、非常放送や緊急放送、BGM放送、業務放送、案内放送など多用途に活用されています。HX-5シリーズは、「TOAの放送はクリア」というイメージを定着させてくれています。

その他、万博文化センター周囲の芝生にはガーデンスピーカーが、日本産業館の外壁にはトランペットタイプのスピーカーが採用されるなど、TOAのスピーカーシステムが適材適所に設置され、来場者に確実に放送を届けています。

  • 万博文化センターの外にあるガーデンスピーカー
  • 中国館の周囲に設置されているコンパクトアレイスピーカー
  • 万博センター
  • 万博文化センター
  • 日本館
  • 万博博物館
  • 日本産業館
  • 都市足跡館

※ CobraNetはCirrus Logic社の商標です

インタビュー記事

インタビュー記事

クオリティの高さと万全のバックアップ体制が、確実な信頼関係を築いています。

特約店:上海先際科普器材発展公司

薫事長 沙 冲 氏

放送システムの評判はいかがですか?

上海万博が開幕し、運営の方からも実際に来場した方からも、音のクオリティに関して「明らかにTOAの放送システムの音はクリアで聞き取りやすい」と評判で、非常に満足していただいています。また操作面においては、直感的にわかりやすいインターフェースにより誤操作することもなく、円滑な運用に役立っています。

バックアップ体制は万全ですか?

故障検知システムにより、正常に作動しているかどうかSX-2000のディスプレイ上で確認することができます。異常を検知した場合には、どこに異常箇所があるのかをチェックして、技術員に対応させることが可能です。また、セキュリティチェックが非常に厳しい万博会場ですので、予め会場内にチェックを受けた予備の機器をスタンバイし、万が一の故障が起きたときにはすぐに復旧できるように万全の体制を整えるなど、運用上の安全面にも配慮を怠らず、アフターサービス面でも評価いただいています。

上海万博への納入で苦労した点について教えてください。

中国館やテーマ館は、当社でも過去に経験したことがない大規模空間での放送システムでした。スピーカーの設置場所が限定された中で音響設計しなければならず、建築設計の段階から建築業者とも何度も打ち合わせを重ね、どのような種類の音響機器をどこに設置するか、どのような音響制御システムを組み込むか、音響シミュレーションを重ねて検討しました。その甲斐もあり、それぞれ最適な放送システムができたと自負しています。

TOAの放送システムが採用されたポイントは?

これまで数々の空港や、オリンピックスタジアムへの放送システム納入実績が大きいと考えています。中国市場におけるTOAブランドの認知や理解をさらに進め、当社が得意とする大型物件だけでなくチェーン店舗などの商業施設へも展開していきます。お客様とのコミュニケーションを密にすることで、これからも強固な信頼関係を築き、TOA商品の活躍の場を広げていきたいと思います。

  • 上海繁華街のハーゲンダッツ
  • 上海繁華街のピザハット
  • ハーゲンダッツ店内の天井埋込型スピーカー
  • ピザハット店内

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