特集
TOA Music Workshop
子どもたちの感性を刺激し、創造力や表現力の扉を開く90分間。
TOA Music Workshopについて
概要
TOA Music Workshopとは?
-
プロのアーティストと一緒に、思いっきり音楽とダンスを楽しむプログラム。学校の施設内で、学年全員で体験するパッケージ型ワークショップです。初めて出会うアーティスト、初めて見る楽器とダンスにワクワクし、気づけば夢中でカラダを動かす90分。心をひらいて、全身で弾めば、これまで気づかなかった新しい自分にきっと出会えるはず。それは自分にとっても、友達にとっても、新鮮な驚きを得られる体験になることでしょう。
本プログラムは、子どもと芸術に関する活動を専門とするNPO法人子どもとアーティストの出会いとの協働事業です。
- 子どもの感想
・何もかも忘れて夢中になれた。
・体と心が一つになったような感じがした。
・いつもとちがう自分になったような気がした。
・自分がこんなに大笑いして、体動かして、はしゃいだのは初めてかもしれない。
・いつも怒ってばかりいる人でも、ダンスや踊りをすると、笑顔になれるんだなって思った。
・今まで、おとなしそうだなと思ってた子も、ノリノリで新しい一面を見て嬉しかった。
- 教員の声
-
その日、子どもたちの表情はきらきらと輝いていました。
それには、3つの理由があるようです。「友達の笑顔」「友達との一体感」そして「新しい自分の発見」。多忙な生活や友達関係、緊張やストレスの多い今の子どもたちにとって、音とリズムに身をゆだね、心と体を解放する経験は驚きと心地よさに満ちたものだったようです。(2010年度参加校 八幡市立美濃山小学校教諭 藤原由香里)
ワークショップの内容
ワークショップには、子どもたちを夢中にさせるさまざまな工夫がちりばめられています。例えば「オープニング」。音響・照明で演出された体育館、打楽器がビートを刻む中、躍動するダンサーのシルエットが一瞬で子どもたちを非日常へ誘います。また、カラダをほぐすのは「マネダンス」。ダンサーの動きを全員で真似、いろんなポーズを楽しみます。静と動、音楽とダンスを織り交ぜながらワークショップは進行し、フィナーレは全員一緒にハジける「クライマックス」。子どもたちの思い思いのパフォーマンスが、会場狭しと躍動します。
※プログラム詳細は実施年度によって変更されることがあります。
ワークショップの効果
- 子どもたちの意識変化
- ワークショップ体験後、子どもたちの心に変化が表れています。
-
-
体験児童84人を対象とした自社調査より抜粋
■子どもたちの自己表現意欲が向上体験の前後でアンケート調査したところ、「自分を表現することが好きだ」に当てはまる・少し当てはまると回答した子どもたちが、体験後に約13p増加。また、友達に対する苦手意識にも変化が見られました。
■子どもたちは友達とカラダに注目体験後の感想文を調べた結果、「楽しい」「できる」などのプラスイメージの言葉を、子どもたちは多く使っていました。
また「みんな」「友達」などの仲間を意識した言葉、「おどる」「ダンス」など自分のカラダに注目した言葉が目立ちました。
-
- 保護者の意識
- 保護者は子どもたちに何を学び、どのような力を養って欲しいと考えているのでしょうか。
-
-
■子どもたちに養って欲しい力は「心の豊かさ」
子どもたちが生きていく上で最も必要だと保護者が考えているのは「心の豊かさ」と「コミュニケーション力」。
「心の持ち方」を重視する保護者の心情が伺えます。■「心の豊かさ」を音楽に期待保護者が子どもたちに最も養ってほしいと考える「心の豊かさ」。それを育む教科として、約4割の保護者が音楽に着目しています。また、「コミュニケーション力」を育てる科目として、国語・外国語に続いて、音楽が3位となりました。
「TOA 音楽と教育の意識調査2010」より抜粋
-
ワークショップを支えるメンバーたち
ワークショップを支えるメンバーたち
- ダンスカンパニー セレノグラフィカ 代表 隅地茉歩
-
-
振付家・ダンサー(ナビゲーター、ダンサー)
忘れられない体験とは自分自身がつかみ取ること
私はワークショップのナビゲートとダンスの実演を担当しており、音楽の楽しさや豊かさを子どもたちにより体感してもらうためには、ダンスがどのように関わり、サポートすればよいか、日々模索を重ねています。
そのような模索の中から出た答えを通じて、90分のワークショップの中で、参加した子どもたちの心が徐々に開放され、表情も身体もいきいきとしてくるのを目の当たりにすると、なんとも言えない充実感でいっぱいになります。
実は最近、日々の生活の中で、子どもたちの心身が沸き立ったり静かに落ち着いたりする状態のレンジが狭くなっている気がしてなりません。そんな中、TMWはそれを広げられる機会になっているのだろうと実感しています。
自分の力で、そして全身で、「音」を感じ身体を動かすことで、“忘れられない体験とは自分自身がつかみ取ること”であることを味わってもらえたら幸いですね。 そしてもちろん、そういうことを他の人とも共有できる人に育ってくれれば言うことはありません。
- チャンゴ奏者 高庚範
-
-
音楽担当
はじめは悩んだTMWも、子どもたちの反応を見て楽しく!
実は、講習形式とは違うワークショップに参加し、子どもたちの反応を見て、考えながらつくることはこれまで経験したことのないものでもあり、初めはとても戸惑いました。異なったジャンルのアーティスト(ダンサー)と、どう合わせていけばいいのかと悩んだこともありました。
しかし、実際に何度か参加することで、子どもたちの反応が新鮮で、ライブ感・臨場感があり、どんどん楽しくなってきました。
最近の子どもたちは自発的なことをしないという印象を持っていましたが、TMWで本来の子どもの姿を垣間見て、子どもは今も昔も変わっていないと実感しました。
私も、子どもたちの成長に負けていられません。「韓国の伝統楽器」という枠にとらわれず、ジャンルを超えて、グローバルな音楽をつくり、子どもたちに届けたいです。そして、TMWオリジナルの音楽をつくることができるといいですね。
- NPO法人子どもとアーティストの出会い 理事長 井手上春香
-
-
企画制作、全体進行担当
伝えたかった想いが、子ども達に届いた喜びに感動!
子どもたちが、今まで知らなかった音楽の楽しさや、自分を表現する喜びを味わい、「楽しかった!」と満面の笑顔を見せてくれた瞬間は、本当に嬉しいです。
限られた時間と設備の中で、どうすれば子どもたちがアーティストと一体となって、より音楽の楽しさを体感できるようになるのか。そのために、90分間のワークショップ終了後に、3時間かけて改善点を模索したこともありました。こうした時間の積み重ね、様々な試行錯誤の繰り返しが、今のTOA Music Workshop (TMW)を創ったのだと思います。
先日、とても心に残ったことがありました。
アーティストのパフォーマンスの最中にひとりの男の子が突然集団から飛び出し、アーティストと一緒に踊りはじめ、周囲の喝采を浴びました。後日、担任の先生に伺うと、普段はとても静かなお子さんで、クラスメイトが何より驚いたとのことでした。
私たちがTMWで伝えたいことが、彼の心に届いたのだと思うと、とても感動しました。
このように、TMWに参加することで思いきり心と体を開放し、音楽の楽しさや、普段は気づかない自分や友達の良さを知るきっかけになれば嬉しいですね。
きっと、このような体験を積み重ねて、自分とまわりの人を大切に思う心を育てることができると信じています。
- TOA株式会社 広報室 社会貢献・メセナ担当 吉村真也
-
-
企画、全体統括
音楽と接する中で一人ひとりに生まれる自発的な変化を大切に。
芸術を子どもたちの教育に活かす活動は数多くありますが、TMWのように多人数・短時間という形式で実施している例は少ないはずです。
「どうすれば学校にとって利用しやすいプログラムになるのか?」そのために7年の年月をかけ、メンバーとともにゼロから創りあげてきた活動です。
その過程は苦労の連続でしたが、何より充実した時間でもありました。
メセナ活動とは、「TOAってこんな会社です!」という自己紹介のようなもの。地域社会と企業の共存における、「最初の一歩」を創る活動だと考えています。
TMWの活動後、「TOAのみなさん、また来て下さい」と子どもたち直筆のお手紙をいただくことがあります。おそらくは知らない会社だったTOAに、子どもたちが親しみを感じてくれたのだと、嬉しく思っています。
ワークショップの終了直後、一人の児童が満面の笑みで駆け寄ってきて、汗だくで息も切れ切れながら「ボク、めっちゃ凄かった!」と声をかけてくれたことがありました。
間近で見たプロの演奏やダンス、その凄さに感動する以上に、プロと一緒に音楽に参加し精一杯踊り続けられた自分自身に驚き、「凄い」と讃えての素直な言葉だったと感じています。
TMWの活動の中では、学校の先生ですら予想もしていなかった変化が、子どもたちに現れることがあります。何年も体育を見学していた生徒が、ダンスの最中に集団から飛び出て一人で踊りだし、それを友人が喝采で讃えたこと。学級参加が出来なかった児童がワークショップに参加し、感想文まで書いたことに、先生も保護者も驚いたこと。
いずれも小さな出来事ですが、子どもたち本人にとっては大きな変化です。それは、子どもたち自身が自分自身の可能性や素晴らしさに気づき、「新しい自分」に出会うこと。TMWは、こうした変化を意図的に誘導することはしていません。あくまで、音楽を通して、そのきっかけを提示する活動でありたいと思っています。
TOAは本業として、校内放送設備や安全管理などで、学校運営への貢献に取り組んでおり、本業以外においても子どもたちのことを自発的に考え、メセナ活動として音楽と感動を届けています。
そのどちらもが「学校に対して、TOAが出来ること、やるべきこと」だと思っています。日本中の学校が安全で、そこで子どもたちがのびのびと音楽を楽しみ、そして、TOAに親しみを持ってくれている。そんな未来になれば嬉しいですね。