ノエビアスタジアム神戸 様
全天候型ノエビアスタジアム神戸の全天候型「音」演出。
概要
2002年の日韓共催FIFAワールドカッブで舞台の一つとなった「ノエビアスタジアム神戸(旧:神戸ウィングスタジアム)」。
常緑天然芝を採用したフィールドは、陸上トラックがなく、フィールドと観客席が近いのが特徴。ワールドカップ後も、テストマッチや親善試合といった国際級のゲームが行れ、Jリーグ・ヴィッセル神戸のホームスタジアムにもなっています。また、開閉式の屋根が完成した2003年以降は、全天候型ドームスタジアムとして、球技以外のイベントでも利用されるようになっています。
ボタン操作一つで、屋根の開閉、イベント内容、観客の入り具合に応じた適切な音響設定を一発呼び出し、即、設定
TOAは、ノエビアスタジアム神戸に、フィールド用放送設備と非常用放送設備を納入しています。鉄筋とコンクリートで設計されたこのスタジアムは、客席が階段状で傾斜しており、ワールドカップ時は部分的に屋根が付いている状態でした。音が反響しやすく、場所によって音の聞こえ方が一定にはならない、非常に難しい物件です。さらに、ワールドカップ後は開閉式の屋根が取り付けられること、イベント等でも利用されることが決まっており、そういったことも見越した上での音響設計が求められたのです。
スタジアムの収容人員は約3万人。100点満点を取ろうと思うと、フィールドで動いている選手、スタンドにいる観客、それもどこのスタンドにいても同じ音量、同じ明瞭度で聞こえることが求められます。また、屋根を開けて運営する場合と、閉めて行う場合とでも音響の設定に差が出てくるのです。
音響設計にあたっては、建築音響と電気音響の両面から、施工前の綿密なシミュレーションによる全体の残響時間や最大音圧などを検討。その結果、TOAが提案したのは、ウィーン国立歌劇場などでも導入されているフルデジタルミキシングコンソール「ix-3000」と、デジタルプロセッサーを核にした音響システムでした。その特徴は、プロをも唸らす高音質に加え、主な操作が音響調整室で一括制御できること。サッカー、展示会といったイベント毎や、観客の入り、天候(屋根の開閉)に応じた適切な音響設定をあらかじめ記憶させることで、簡単に設定・再現できるところにあります。
ヴィッセル神戸の試合では、スタンドに数万の観衆が集まりますが、展示会などではスタンドには人は入らず、フィールドに集まることになります。当然、この二つでは鳴らすスピーカーの場所も数も、音量も違ってきます。そういう設定を、あらかじめ入力してあるパターンから選び、ボタン操作一つで切り替えることができるのです。
約70台の特注スピーカーは、個別に音量調整も可能。耳障りな残響音を抑え、明瞭で迫力の音を再現します
スタジアム内に配置されたスピーカーは約70台。全て神戸ウイングスタジアム用に制作された特注品です。
スピーカーで最も考慮したのは音量。次いで、低域から高域までの音質と幅でした。3万人の大観衆が立ち上がって大興奮している時でも、ちゃんと聞こえるだけの音が出せること。それも、キンキンした音ではなく、低域から高域までクリアに出せることにこだわりました。また、海に近いスタジアムの屋外スピー カーということで、雨や潮風に強い防水加工も施されているのです。
これらの特注スピーカーを、効率よく、会場のどこにいても均等に音が聞こえるよう分散して配置。スピーカーは1台毎に音量調整が可能なため、耳障りな残響音を少なくすることができ、全ての観客に明瞭で迫力のある音を、均等に届けることができるようになっています。