学級アンケート調査

TOA Music Workshop体験児童を対象に、体験による学級内での意識変化を調べるとともに、プログラムの感想文を分析しました。

分析Ⅰ

体験により、子どもたちの自己表現意欲が向上、友達への苦手意識にも変化が

【学級アンケート 事前・事後比較】(n=84)

肯定的回答 否定的回答
当てはまる 少し当てはまる 小計 あまり当てはまらない 当てはまらない 小計
設問1
友達と一緒に活動するのは好きだ
事前 70 13 83 1 0 1
事後 70 13 83 0 1 1
増減 0 0 0 -1 1 0
設問2
友達は、自分のことを受け入れてくれている
事前 62 19 81 2 1 3
事後 64 16 80 3 1 4
増減 2 -3 -1 1 0 1
設問3
友達の違う意見に耳を傾けようとしている
事前 64 18 82 1 1 2
事後 62 19 81 2 1 3
増減 -2 1 -1 1 0 1
設問4
学校で友達のことを尊敬したりすごいと思う
事前 71 11 82 0 2 2
事後 69 13 82 1 1 2
増減 -2 2 0 1 -1 0
設問5
苦手な友達とも関わろうとしている
事前 19 43 62 17 5 22
事後 34 32 66 13 5 18
増減 15 -11 4 -4 0 -4
設問6
自分には良いところがあると思う
事前 30 45 75 6 3 9
事後 36 37 73 9 2 11
増減 6 -8 -2 3 -1 2
設問7
自分を表現することが好きだ
*事後にて、無回答1名含む
事前 24 30 54 22 8 30
事後 31 33 64 16 3 19
増減 7 3 10 -6 -5 -11
設問8
友達が表現するのを見るのが好きだ
事前 51 25 76 6 2 8
事後 58 20 78 4 2 6
増減 7 -5 2 -2 0 -2
設問9
普段から自分の意見や感じたことを言葉に表す
事前 36 34 70 12 2 14
事後 40 32 72 10 2 12
増減 4 -2 2 -2 0 -2
設問10
普段から、自分の感じたことを身振りが表情で表す
事前 36 37 73 8 3 11
事後 36 40 76 5 3 8
増減 0 3 3 -3 0 -3
肯定的回答 増加数計 17 否定的回答 増加数計 -18

TOA Music Workshop(以下、TMW)体験児童を対象に、体験による学級内での意識変化を調べたところ、児童が比較的苦手意識を持っていると思われる項目について、目立った意識の変化があることがわかりました。設問は、TMWのプログラムとは直接関連を持たない内容とし、学級運営にプラスイメージとなる10問を設定。それぞれ肯定的回答2段階と否定的回答2段階、計4段階の選択式回答とし、同一児童に対して体験の前後で二度実施しました。

<自己表現意欲が増加>

結果を比較したところ、「設問7 自分を表現することが好きだ」では、否定的回答が事前30名⇒事後19名に減少。合わせて肯定的回答が増加しましたが、中でも「当てはまる」と回答した児童が7名増加しました。アーティストのリードにより「自由に体を動かす」というTMWの体験により、自己表現への抵抗感が減少したのではないでしょうか。

<苦手な友達と接する意欲が向上>

また「設問5 苦手な友達とも関わろうとしている」では、「当てはまる」が15名増加。このうち多くは「少し当てはまる(11名減)」から回答を変えた児童だと思えます。合わせて「設問8 友達が表現するのを見るのが好きだ」に「当てはまる」と回答した児童が7名増加。学年全員でTMWに参加することで、苦手だと思っていた友人の普段とは違う一面を発見し、驚き、より積極的に「関わりたい」と思う動機を得たのではないでしょうか。

全体的に見ても、肯定的回答が17名増え、否定的回答が18名減少。TMWは学級運営にとってポジティブな影響を与えたことが伺えます。

<アンケートデータ>
対象:八幡市立美濃山小学校 6年生 84名
実施日時:事前10月7日、事後10月8日 約2分間
形式:無記名方式

分析Ⅱ

子どもたちが着目したのは、「他者との関わり」と「身体性」

抽出語 出現数   抽出語 出現数   抽出語 出現数   抽出語 出現数   抽出語 出現数
する 70 笑顔 9 うまい 4 得意 3 みる 2
楽しい 64 ある 8 よる 4 あと 2 むずかしい 2
おどる 46 いっしょ 8 リズム 4 いい 2 わかる 2
みんな 39 おとなしい 8 意外 4 いきいき 2 わらう 2
思う 37 たのしい 8 一つ 4 いっぱい 2 意外と 2
28 見る 8 笑う 4 いま 2 意見 2
友達 27 ダンサー 7 表現 4 おどろく 2 2
26 楽しむ 7 あんなに 3 おもい 2 楽器 2
ダンス 25 時間 7 いい 3 かかわる 2 結構 2
自分 22 初めて 7 がんばる 3 キラキラ 2 今日 2
おどれる 21 とっても 6 けっこう 3 くる 2 使う 2
できる 20 ない 6 ちょっと 3 こう 2 授業 2
はずかしい 19 もっと 6 テンション 3 すき 2 上がる 2
いつも 17 6 ニコニコ 3 すこし 2 心から 2
動かす 17 おもしろい 5 はしゃぐ 3 たのしむ 2 静か 2
楽しめる 16 これから 5 まね 3 たのしめる 2 多い 2
すごい 14 こんなに 5 感じ 3 ちがう 2 体育館 2
とても 14 しっかり 5 3 つく 2 大笑い 2
なる 14 たくさん 5 気持ち 3 どんどん 2 短い 2
あまり 13 なれる 5 興味 3 のりのり 2 知れる 2
やる 13 ノリノリ 5 苦手 3 はく力 2 2
いる 11 ふだん 5 3 はげしい 2 動き 2
よい 11 やっぱり 5 最初 3 はりきる 2 明るい 2
好き 11 元気 5 上手 3 びっくり 2 緑 *リンク2参照 2
動く 10 思える 5 乗る 3 ビックリ 2    
音楽 9 少し 5 盛り上がる 3 ベスト 2    
9 聞く 5 全員 3 ポーズ 2    

【表1 児童感想文における出現数上位語】 *複数回出現語を抽出

他者との関わり語 身体関連語 音楽関連語
自分について 12人 (14.29%) 55人 (65.48%) 8人 (9.52%)
友達について 65人 (77.38%) 40人 (47.62%) 6人 (7.14%)

【表2 特定語を使用した児童の数】  (n=84)

TOA Music Workshop(以下、TMW)体験児童を対象に、「新しい一面を発見しましたか?」というテーマで感想を調べたところ、多くの児童が、「みんなと一緒に、体を動かすこと」から強い印象を得ていたことがわかりました。テーマは「自分について」「友達について」の2項目で質問、回答は自由記述としました。

<全体的に肯定的な表現が多く見られる>

児童がどんな単語を使って感想を書いたのかを全体集計したのが表1です。多く使われていたのは、「楽しい(64回)」「良い(11回)」「笑顔(8回)」「ノリノリ(5回)」などのプラスイメージの単語。児童が体験に良い印象を持っていることがわかります。

<他者との関係の中で、自分を再発見>

さらに詳しい傾向を調べるため、意味合いが同じ単語のグループを設定し、それらの単語を使用している児童の数を集計しました(表2)。グループは、「友達」「いっしょ」などの『他者との関わり語』、「ダンス」などの『身体関連語』、「楽器」などの『音楽関連語』の三つ。「友達について」の感想に『他者との関わり語』が多いことに違和感はありませんが、「自分について」の感想内でも12人の児童が他者との関わりを書いています。自分自身を振り返る過程で、“みんな”との関係に着目した児童が少なく無かったことがわかります。

<多くの児童が、身体性に着目>

また、「自分について」再発見する過程で、55人が身体に関する感想を書いています。これは、「友達について」でも同様で、「音楽」そのものについて書いた児童に比べ、圧倒的に多い結果となりました。音楽とダンス、切り離しては考えられませんが、児童にとって直接的に「みんなと一緒に体を動かす」ことの印象が強さが、あらためて示された結果となりました。

<アンケートデータ>
対象:八幡市立美濃山小学校 6年生 84名
実施日時:10月8日 約20分間
形式:無記名方式

分析Ⅲ-①

子どもたちが見つけたこと -感想文より- ①

分析Ⅰ、Ⅱに関連した、具体的な感想文の記述をご紹介します。「自分について」の感想では、自分自身の変化に気付いたコメントが多く見られました。とりわけ、初めての経験であった「ダンス」を楽しめた自分に驚いている様子が印象的です。

【新しい発見をしましたか?】

<自分について 男子>

  • 人目に気にせず、おどれていた。
  • 何もかも忘れて夢中になれた。
  • 体と心が一つになったような感じがした。
  • いつもより、ダンスが好きになった。
  • あまりおどらない自分だったけれど楽しくおどれた。
  • みんなと楽しくおどれた。みんなと一つになっておどれたのでよかった。
  • みんなでおどったりするのがたのしかった。
  • ダンスはあまり好きではなかったけどおどっていると楽しかった。
  • ストレス解消できたこと。
  • いつもあんなにはげしいダンスをしてなかったので初めてやったらものすごく楽しかった。

<自分について 女子>

  • やっぱり表現するのは苦手だけど、これからは少しずつ自分自身を表現できるようにしたい。
  • あまりおどるのが得意じゃなくてもダンサーの人たちや楽器を演奏してくださった人たちと一つになって楽しめていた。
  • いつもとちがう自分になったような気がした。すごくたのしかった。
  • 自分がこんなに大笑いして、体動かしてはしゃいだのは初めてかもしれない。
  • ダンスやおどりって(いいなぁー)、(楽しいなぁー)と思った。
  • 友達といっしょにわらったりした。
  • 心があたたまるくらい体を動かせた。
  • 音楽ではずかしかったのが、いっきにふっとんだ。
  • ふだんは、あんまりおどったりしないけど、今日はおもいっきりおどれたので楽しかったです。
  • 自分が心の底から楽しめたし、やった事のないポーズを自分でどうどうとやった事が楽しかった。私もあんな仕事がしたいなぁと思った!最高~
  • ダンスはハードだったけれど赤ちゃんにもどった感じになっておもしろかったです。
  • やっぱり体を動かすのは楽しいと感じる自分がいた。
  • いつもはあまりさんかとかしなかったけどみんなや音楽をしている人といっしょにおどれたしはずかしがらんでいいんやと思った。
  • 自分も友達とダンスをして、あらためてダンスって気持ちよくなるんだなぁと思った。
  • 自分はこんなダンスができたんだと思った。こんなに短い時間で激しく体を動かしたのは初めてだった。
  • こんな短い時間の中でこんなにおどったりしたことは、あまりなくて、こんなにはげしくおどるのは、とても楽しいことなんだと思う。
  • とても楽しかった。今まではこうゆうみんなでおどることとか好きじゃなかったけど、今日はなんだか「がんばってるや~ん!」って感じだった。
  • この時間で、いままでも音楽はすきだったけれど、もっともっとすきになることができました!!

分析Ⅲ-②

子どもたちが見つけたこと -感想文より- ②

「友達について」の感想では、普段と違う一面を発見したことに対する驚きのコメントが印象的でした。その結果、「いつも以上に仲良く」なり、「もっといろんな人にかかわりたい」という心情の変化を直接的に表現したコメントも見られました。

【新しい発見をしましたか?】

<友達について 男子>

  • 友達もすごいおどっていて笑顔でおどっていました。
  • 意外にダンスが上手かった。
  • みんなを見ているとおどりたくなったような気がした。
  • Eさんがはりきっていて(すごいなあ あんなにやる気でるんだなあ)と思った。
  • ふだんおとなしい人がダンスでは、はちゃめちゃにおどっていて、人を観察するのが楽しかった。
  • テンションが高い友達だと思った。
  • Mくんがいつもよりはりきっていた。
  • 意外な面が見れた。
  • ふだんあまりかかわらない人とでも音楽を聞いていると楽しくおどったりすることができた。
  • これからもどんどんほかの人ともかかわるようにしたい。

<友達について 女子>

  • いつもおこってばかりいる人でも、ダンスやおどりをすると、笑顔になれるんだなって思った。
  • いつもニコニコしている人の笑顔をみるともっとキラキラした笑顔だった。
  • いままで(おとなしそうな子だな)と思ってた子も、ノリノリで新しい一面をしれてうれしかった。
  • 友達が、どんなことが苦手か得意かが、少しだけわかった。
  • 友達も最初ははずかしがってたけど、あとになるほどに自分でおどりをプラスしてた。
  • 友達とおどれて楽しかったです!6年生全員でおどったのでもっと楽しかった!ベストダンサーFちゃんがノリノリでビックリしました!
  • 元々明るくて元気な子がもっと明るく元気になったしちょっと元気じゃない子も楽しくできたと思いました。
  • 友達が笑っていると、心の気分が変わり、自然と体が動く自分がいた。
  • 意外な人たちもとても楽しそうでした!!
  • こうやって友達といっしょにやって自分が楽しめたから友達も楽しめたと思う。また友達が楽しんでいたから自分も楽しめた。だから、「これからも友達を大切にしよう!」と思った。
  • 友達といっしょにやると心が一つになれたような気持ちになれて、いっそう楽しくダンスができた。
  • 自分を表現するのが好きな子もなかにはいるんだなと思った。自分と全然違うタイプの人も結構いるんだと思った。
  • 友達といっしょにおどることで、いつも以上に友達と仲良くおどれたのでとってもたのしかった。
  • 体をたくさん使っておどっている人を見て自分を表現することが好きなんだなと思った。
  • はずかしがってあまり動きにあらわさない友達もいれば、逆におもいっきり動いたりする友達もいた。
  • いつもはおとなしいのに、体育館に入って動く時、がんばってついていこうとしていて、こんなところもあるんだなぁとこの勉強で初めて知れた。