新しいワークスタイルの実現と、イノベーションの活性化を目的とした新本社が完成。
ライオンブランドの世界観が感じられるおもてなし空間、音空間演出を二人三脚で構築。
1891年の創業以来、ハミガキや石けんをはじめ洗剤やヘアケア、スキンケア商品などを通じて、人々のより良い習慣づくりに貢献し続けているライオン株式会社。2023年春には、東京エリアにある4つのオフィスを台東区蔵前に集約し、「自ら選ぶ」「つながる」「ワクワクする」をコンセプトにした新本社ビルをオープンしました。
TOAは、ライオン新本社ビルの主要フロアの音空間演出を担当しました。内装デザインとも調和のとれる空間演出について打合せや試行錯誤を重ね、イマーシブオーディオ(立体音響)による音空間演出と、より自然でさりげない環境音やフロアごとの用途・目的に応じたBGMを納入。ライオン新本社ビルでの社内外のエンゲージメント向上にも貢献しています。
納入品
ネットワークCM・BGMプレーヤー NA-3000
パネル型スピーカー
植栽型スピーカー、サブウーハー
パワーアンプ等
納入時期
2023年3月
採用背景
旧本社ビルの築50年を前に、移転を検討。移転を機に新しいワークスタイルの実現と、社内外のイノベーションの活性化を目的に新本社ビルの移転プロジェクトがスタート。
1階エントランスではライオンブランドの世界観を体現した「快適で居心地のいい空間」でおもてなし。開放的で、自然で、さりげなく感じて、知って、楽しんでもらえるように、イマーシブオーディオ(立体音響)による音空間演出でサポート。
ミント畑什器内に設置されたスピーカーからは、小川のせせらぎが流れる。
1オリジナル製作の植栽型スピーカー。植栽の中にツイーターとウーハーが内蔵されている。
1階エントランスのガラス面に設置したパネルスピーカー。鳥の鳴く音や風の音などが、本当の自然の中で聞いているように感じられるよう設計。また、その場にいる人がさりげなく「ミント畑」が気になるよう、ミント畑に向けて、まるで窓の外から風が流れ込むような音像移動を演出している。
1階エントランスのラック型放送設備。ネットワーク型CM・BGMプレーヤーNA-3000やパワーアンプ等が収められている。
2階「来客会議室フロア」
1階エントランスから2階に移動する際に統一感が感じられるように、1階の空間音演出をベースにマスキング効果のある演出を行なっている。天井埋込スピーカーのほかに、ソファエリアには2台のパネルスピーカーを窓側に設置。イマーシブ音源を用いた快適な空間演出と来客会議室フロアのイメージに合わせて制作したオリジナル音源でお客様をおもてなし。
4階「共創フロア」はライオンが他の企業とのコラボレーション、タイアップなど、何かを一緒に創るときに使用するエリアとして設置。自然音にプラスして、アクティブなイメージの音源を採用している。
11階のライブラリーも併設された「多目的フロア」。社員が和やかな空間でリラックスしてミーティングができるようにと、ラウンジにはライトジャズやボサノヴァが流れる。
12階のカフェテリア「OLION」。社員食堂だが朝から常時開放されており、昼間はミーティングなどでも利用されるほか、夜はBarタイムとして社内のコミュニケーションスペースとしても利用される。昼と夜でBGMを変更するだけでなく、混雑状況によって音量の自動調整を行う。
ライオン株式会社 総務部 本社移転推進グループ マネジャー
三浦 葉一 様
ライオン株式会社 コーポレートコミュニケーションセンター アーカイブ室 室長
土岐 育子 様
ライオン株式会社 総務部
西本 博昭 様
三浦 氏
コロナ禍で短い時間でも押しつけがましくなく自然な形でライオンブランドの世界観を感じて、知っていただくために、どのようにお客様をおもてなしすれば良いのかをプロジェクトメンバーと検討を重ねました。その中で出てきたコンセプトを凝縮させたのが「Feel & Know Lion」です。社員がワクワクして出社したくなる、来られたお客様がまた来たくなる場所にするには五感に訴えようということになり、エントランスにミント畑の什器を設置する案と音による演出にこだわるという案が同じぐらいのタイミングで出てきました。最終的にその2つをつなげる方向でコンセプトが決まり、その設計・演出をTOAさんと一緒に検討を重ね、実現しました。
西本 氏
空間のコンセプトをヒアリングをしていただいたタイミングで、やっぱり我々として伝えたいことは、ミント畑の本当の姿って普通の森とは違うんだよということ、水は心地よくチョロチョロ流れるような感じで、でも風はいつも大平原を吹き抜けているといった感じをいかに体感してもらえるかでした。打ち合わせを重ねる中で、「頭の上から水の音って気持ち悪いよね」とか、「やっぱり鳥の鳴き声って聞こえるはずの方向から来ないといけないよね」などを実感できるようになり、具体的な実験で体感しながら、「その方向まで立体的にこだわっていくのなら、少しスピーカーを置きましょうか」と、まさに専門的な知見がそこで入ってきて、そのスピーカーを置く場所とか、現場に入ってからの急激な仕上がり具合をすごくわくわくしながら、一緒に聞かせていただきました。
コンセプト理解というのがすごく大事だなって、本番で痛感したところですが、いろいろ議論を重ねる中で、今回のような立体音響でいきましょう!みたいなところをTOAさんに導き出してもらいました。
土岐 氏
エントランスは、自然の中にいるような雰囲気、空間を作ってほしいとお願いしました。当初はミント畑の什器や植栽にスピーカーを設置するという設計はなかったのですが、ヒアリングや打ち合わせを重ねていく中で、カタチになっていきました。
とくに難しかったのは、風の音ですね。アメリカのミント畑は砂漠地帯に灌漑をして作られているので、乾いた風がミント畑を凪いでいるといった雰囲気なのですが、それを再現しようと思うと雑音のような感じなってしまうので、風自体の音じゃなく、風が吹いて木々やミントの葉が揺れている感じの音で再現することができました。
西本 氏
1階エントランスのミント畑は本来オフィスの中になくていいものなんですね。ただ、今の社員であのミント畑が不要だと思っている社員はだれもいないと思うんです。こういう「新しい考えや価値観があっても大丈夫」といった受容性の広がりを示すことができたと考えています。多様性を受容し活かしていくダイバシティ&インクルージョンの考え方も、普通のオフィスで働いているとなかなか実感できないと思いますが、あの不自然な自然であるミント畑がオフィスのエントランスにあったり、礼拝室や親子ルーム、マザールームがあるといったことも受容できて活かせるっていうところに持っていく、ある意味一つの布石でもあったと思います。そういう意味では非常に重要な役割を担っていると思います。
土岐 氏
社外のお客様が来られた時ですが、窓のスピーカーは見えているのに言われないと気づかないんですよね。これは説明したときに、すごく驚かれるので、説明のしがいがありますね。3つあるミント畑の什器の真ん中に誘導して、本物のミントを栽培している什器であることを説明して、実際に触っていただいて手触りや香りを感じていただき、さらに自然の音の音響演出を紹介しています。植栽スピーカーやパネルスピーカーは見えますが、ミント畑の什器の中にスピーカーが入っているとは思われないので、「ここで水の音が聞こえるんです」と言うのが私の説明のヤマ場になっています。お客様が興味を持って聴いてくださる流れに沿って説明ができるので、とても話しやすいです。
次のフェーズとしては、お客様が来られたときに社員が説明できるようにしていきたいと考えています。
西本 氏
新本社に移転して初めて、入社式がこのエントランスで行われました。その模様がYahoo!ニュースでも取り上げられました。以前は講堂での入社式だったのですが、一番いい環境で新入社員に社会人としてのスタートを切ってもらいたいと開催場所をさがしたときに1階のエントランスをまず体験させたいと考えたわけです。このような変化って働き方を変える方向にもつながると考えています。
三浦 氏
若い社員がお客様と一緒に1階エントランスから2階に移動して商談などをしている風景が少しずつ見られるようになってきましたので、これからさらに社内外のコミュニケーションやイノベーションにつなげていきたいですね。また、台東区サステナビリティ推進部と包括提携を結んでいますので、社員やお客様だけでなく、地域住民の方とも今後このエントランスを活用した共創活動などに広げられたらいいですね。
ライオン株式会社は、ハミガキ、ハブラシ、石けん、洗剤、ヘアケア・スキンケア製品、クッキング用品、薬品等の製造販売、海外現地会社への輸出を手がける大手生活用品メーカー。国内に12の事業所と9の関連会社があるほか、海外にも10拠点を設けている。
人々の心と身体のヘルスケアの実現を目指して、商品の提供とともに、生活者により良い習慣づくりや、環境にやさしい商品の開発と習慣の提案にも取り組まれており、今後もくらし・社会の課題解決に向けた「より良い習慣」を提案することで、人々の毎日に貢献するとともに、持続的な事業成長を目指している。
DATA
ライオン株式会社
https://www.lion.co.jp/ja/