教会を訪れるすべての信者の方へ言葉をはっきりと届ける、安心と信頼の音空間づくり、音響システム。
1896年(明治29年)に先代の赤レンガ造の聖堂が建立されて以来、1世紀以上にわたって福岡市民だけでなく、県内外を問わず広く親しまれているカトリック大名町教会。現在の教会堂は大聖堂、小聖堂、講堂、教室などに分かれ、各施設でミサや勉強会をはじめ、さまざまな行事や催しが開催され多くの信者を集めています。
TOAでは、老朽化した音響設備の全面改修を通して、ミサや各種活動の際に、信者の方に明瞭性の高い聞き取りやすい言葉を届けられる音空間と、施設の利用者の方が操作しやすい教会堂の音響設備を実現しました。
納入先
カトリック大名町教会 様
納入品
デジタルミキサー D-2000シリーズ
デジタルステレオミキサー
デジタルパワーアンプ
ラインアレイスピーカー
納入時期
2011年3月
採用背景
1986年に現在の聖堂が新築されて以来、25年間もその当時の音響設備を使用してこられましたが、音響機器の老朽化や大聖堂の構造上の問題から「説教の言葉がはっきりと聞き取れない」といった声が寄せられていました。だれもが聞き取りやすく、また使いやすい音響システムということで、空港や大学のPAを数多く手がけている実績や浦上天主堂への納入・施工実績などが評価されて、採用となりました。
現在の聖堂は、1986年に改築されたものですが、音響設備も改築当時から25年間使用してこられました。最近では老朽化による不具合やトラブルが多く見られるようになりました。具体的には、マイクの音が聞こえない場所が何箇所かありました。また、高齢の信者の方からも「説教の言葉がはっきりと聞き取れない」といった声を聞くようになりました。
以前よりスピーカーの位置を変更したり、音響機器の設定を調整することで不具合の解消を図ろうとしてきましたが、聖堂の構造上の問題、話し手のスキルの問題などもあり、抜本的な改善は実現できませんでした。このままでは音響設備の役割を果たしていないという結論に達し、2009年から音響設備のリニューアルの検討を始めることになりました。
カトリック大名町教会の音響設備の改修にあたっては、教会の構造と立地の課題がありました。構造上の課題というのは、大名町教会は他の教会と比較して残響・反響は少ないのですが、天井に使用されている吸音材の影響で、音が吸収されて弱くなっていました。立地に関しては、一般的な寺院や教会は比較的静かなところに建てられていますが、大名町教会は福岡・天神の中心部、しかも幹線道路に面しています。そのため、吸音材で音量が弱いところに、人通りや車の往来などで相当の騒音が入るため、さらに言葉が聞き取りにくい環境になっていました。そこで、高齢者を含むすべての信者の方に聞き取りやすい聖堂の音空間を、どのようにして構築するかが大きな課題となりました。
また、大名町教会の施設を利用される方は県内外からたくさん来られます。これらの利用者の方が、簡単な操作で迷わずに使用していただける音響システムを構築するという点も重要でした。
まずは言葉がはっきりと聞き取れないという現状把握をするために、音の明瞭度や聞き取りやすさなどの音の特性を分析するための音響測定を実施しました。その上でカトリック大名町教会に最適なスピーカーを選び、配置を検討しました。
大聖堂の両サイドにはメインスピーカーのラインアレイスピーカーを左右2台ずつ、2階・3階に分けて配置しました。水平方向のみに音を放射する特性を持ち、天井や床からの不要な音の反射を抑え、明瞭な音声を伝達できます。また、距離による音の減衰が少ないので遠達性に優れ、スピーカー近くのエリアと遠くのエリアで音量の差が少ない、ハウリングに強いなど、教会堂の音空間演出に最適な多くのメリットがあります。また、大聖堂後方と祭壇前方に補助用スピーカーを配置しています。これにより大聖堂内部がすべて均一に明瞭な音声が届くようになりました。
大聖堂2階席用に左右に設置されている、ラインアレイスピーカー SR-S4L。
大聖堂の3階席向けに設置されている、ラインアレイスピーカー SR-S4L。
大聖堂のイメージと調和したデザインで、確実に明瞭な言葉を信者の方に届ける。
大聖堂2階の後方と祭壇前方の補助用に設置されているスピーカーシステムF-333。
また、音響設備のデジタル化の検討を行いました。催事の際の音響機器の操作に関しては、施設の利用者が操作することを基本にしていたため、操作性とメンテナンス性を優先して考えました。事前にTOAの内覧会で、デジタルミキサーの操作性の説明を受け、デモなどを通じて調整作業が省力化できる点も確認し、最終的にデジタルミキサーの導入を決定しました。
デジタルミキサーは、専用のソフトウェアによりパソコンから設定を行います。設定状態は、メモリーに記憶させることができ、本体から呼び出しが可能なため、さまざまな利用形態に応じてすぐに設定を変更することができます。また、祭壇後方の音響室だけでなく大聖堂内のデジタルミキサー用のリモートコンソールユニットで音量や設定などの変更もできます。
デジタルミキサー専用のラックマウントタイプのリモートコンソールユニット D-2012C。大聖堂の音響ラックから離れた場所で、音量調節や事前に調整・保存しておいた各種設定の呼び出し等に使用できる。
大聖堂の祭壇の後ろにある音響室の音響ラック。デジタルミキサー、デジタルパワーアンプ、ワイヤレスチューナーなどを収納。カトリック福岡司教区における司教座聖堂として全国から利用者が訪れる大聖堂を音響面でサポートしている。
講堂などにもデジタルステレオミキサーが導入され、マイクのハウリング抑制や音声の明瞭性を向上させる音響調整などをボタン一つの操作で調整することが可能です。
1階の講堂に設置されているラック。中には、デジタルステレオミキサー M-633Dのほかに、デジタルパワーアンプ DA-150F、ダブルカセットデッキを設置。
1階講堂の前方左右に設置されているコアキシャルアレイスピーカー HS-1200WT。
1階の講堂に設置されているラック。中には、デジタルステレオミキサー M-633Dのほかに、デジタルパワーアンプ DA-150F、ダブルカセットデッキを設置。
(カトリック大名町教会 営繕 松本 公輝 氏)
(カトリック大名町教会 副委員長・書記・営繕 梶原 宏 氏)
梶原氏
以前の音響設備とは比較にならないほど、言葉が聞き取りやすくなりました。また、音が聞こえない場所もなくなり、大聖堂全体で音の明瞭性が飛躍的に向上したと感じています。実際に信者の方からもそのような声をいただいています。2011年3月、当教会出身者が司祭になった司祭叙階式が新しい音響設備のお披露目にもなったのですが、大勢の信者の方を前に大聖堂のリニューアルした音空間をしっかりとアピールできました。
松本氏
音に関しては、とくに音質の部分で明瞭性が格段によくなったという印象があります。どの場所にいても、はっきりと聞き取りやすくなりました。また、デジタル化に関しては、事前の設定・調整の手間が大幅に短縮しました。あらかじめ、使用用途に応じて細かな設定をしておけば、その都度細かな調整が不要になるのは非常に便利ですね。
松本氏
大聖堂、小聖堂、講堂、教室と、今回のリニューアルで教会堂の音響設備の改修を行いました。それぞれの場所でさまざまな利用がされています。カトリック大名町教会の施設を利用される方や音響設備を使用されるすべての方にとって、聞き取りやすい音環境、使いやすく操作しやすい音響設備になるように、常に改善していきたいですね。
梶原氏
カトリック大名町教会は、カトリック福岡司教区における司教座聖堂として、福岡・佐賀・熊本の3県のカトリック教会の拠点として、県内外よりさまざまな利用者が訪れます。普段は説教の言葉を鮮明に伝えるという目的ですが、たまに行われる音楽的な利用の際には、楽器やボーカルの音が快適に楽しめたり、さまざまな信者さん達の交流やコミュニケーションに活用できたらと考えています。
福岡市中央区にあるキリスト教(カトリック)の教会堂。カトリック福岡司教区(福岡県・佐賀県・熊本県)における司教座聖堂(カテドラル・大聖堂)であり、福岡カテドラルセンターの別称がある。
設立は1896年、先代の赤レンガ造りの聖堂が建立されたのが始まり。現在の聖堂は1986年、先代の聖堂の老朽化のために改築され、現在に至っている。
教会堂前の明治通りは福岡市中心部でも有数の幹線道路で、過去のホークス(現在の福岡ソフトバンクホークス)の優勝パレードでは、選手達を祝福するために同教会の鐘が一斉に鳴らされた。
カトリック大名町教会
http://church.jp/catholic-daimyoumachi/