人を結ぶ音
学校やオフィス、街のどこかで、時を告げるチャイムや時報が聞こえてくる。それは時刻を知らせる音としてだけでなく、人々が共有する、時の始まりと終りを告げる節目の音でもある。
学校やオフィス、街のどこかで、時を告げるチャイムや時報が聞こえてくる。それは時刻を知らせる音としてだけでなく、人々が共有する、時の始まりと終りを告げる節目の音でもある。
能舞台の床下には、無数の瓶が埋め込まれ、残響音を高める工夫がされている。また、コンサートホールや劇場も「音」をより理想的な響きにする空間を追求し、様々な工夫がなされてきた。昔から人は「音」を欲し、「音」をより効果的に聞くことのできる、音空間を追い求めているのではないだろうか。
その昔、王候貴族の食事や宴会でよく演奏されていた、バロック音楽の音は、静かにやさしく響き、会話のざわめきのように漂ってくる。
最近の映画は、特撮のすばらしさはもちろん、音もよりリアルになっている。その臨場感あふれる音の一つひとつが、映画館という空間をさらに立体的な音場に変え、まさにその映像の中にいるような感覚が体験できる。映画を観る楽しさから、体感する楽しさへと、音が新たな感動を産み出している。
春は小川のせせらぎ、夏は蝉の鳴き声や波の音、秋になると虫のコーラスや木々のざわめき。ある一定のリズムをもって常に移り変わってゆく自然の創り出す音には、都市生活では味わうことのできない、心をなごませてくれる波動が含まれている。ときには自然の中で耳を澄ませてみるのも一興だ
パリのメトロで電車を待っていると、周りに誰もいないのに話し声がする。向かいのホームにいた数人の声のようだが、ずいぶん近くに聞こえてくる。ささやきの壁で有名なロンドンのセントポール寺院のように、音が響きあう地下空間。無機質なのに、何故か人の温もりが感じられる。