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BGM系サウンドシステム

BGM系の役割とそのルーツ

BGMは、大まかに次のような役割に分類することができます。

  1. 一般的BGM(喧噪のマスキング、空間演出)
  2. 積極的BGM(音楽が商品のCDショップなど)
  3. ゾーニングBGM(百貨店フロアの空間分割)
  4. 特殊BGM(パチンコ店など大音量が必要なもの)

また、BGMのルーツについては、中世ヨーロッパの貴族が晩餐会で重要な会話内容を他人に聞かれないように室内楽を演奏させたのが始まりである、とする説や、20世紀前期のフランスの作曲家がパリの画廊で開催した「聞き流し型」演奏会が原型である、などの諸説があります。

BGMシステムの構成と設計のコツ

1.基礎構成

BGMシステムの基本的な機器構成は、入力から出力まで、次のようになっています。

  1. 音源機器(マイク、CD、カセット、有線など)
  2. ミキサー部(プリアンプ部)
  3. 信号処理機器(イコライザー、コンプレッサー、リミッターなど)
  4. アンプ
  5. スピーカー

システム設計をする場合、内装建築や意匠と絡むスピーカーの検討から入る事が多いと思われます。スピーカーはアンプや信号処理系統の仕様を左右する大事なパートですが、種類も豊富で選定にもちょっとしたコツが必要です。そこでここではスピーカーの選定を中心にBGMシステム設計のコツについてお話します。

基礎構成

2.スピーカーの種類と特徴

代表的なBGM用スピーカーの種類には次のようなものがあります。それぞれ、BGMに求められる役割に適するように、形状、駆動方式、聴こえかた等に工夫が凝らされています。

  1. ボックスタイプ箱型
    ボックスタイプ(箱型)
    いわゆる露出タイプ。天井が低かったり設置台数が少ないと、店内全体に均一なBGMを流しづらいので、その場合は台数を多めにして一台あたりの音量を下げるなどの工夫を。
  2. 天井埋込タイプ
    天井埋込タイプ
    意匠上、スピーカーを目立たせたくない場合に。ボックスタイプ同様、天井が低い空間や台数が少ない場合、聴き位置によって音量差が生じるので、均一なBGMが欲しい場合は台数を多めに。
  3. 広指向性タイプ
    広指向性タイプ
    天井埋込タイプにディフューザー(音響拡散器)をつけたもの。一般的なものに比べ少ない台数で同等の音圧分布を得られる。スピーカー直下でうるさくない独特の音色が特長。天井の低い空間のほか、会話を楽しむ空間、上品な空間演出を狙った店舗に。
  4. 特殊形状タイプ
    特殊形状タイプ(ランプ型、ピラミッド型ほか)
    ピラミッド形状や、ランプ形状(市販のランプソケットに取り付けられるようになっている)など、スピーカーを意識させないデザインのスピーカー群。専用ウーハーと組み合わせることで想像以上の再生音に。店舗内装デザインと上手く組み合わせて。

3.施設の使用目的などの把握

スピーカーの機種選定に先立ち、プランの対象施設の性格や予算等の確認をしましょう。

  • レストランの場合
    メインフロアのほかバーカウンターを有する高級レストラン。天井高はメインフロア4m・バーセクション2.4m。
  • パチンコ店の場合
    女性客も狙ったアミューズメント型パチンコ店。天井高は3.5m。
  • CDショップの場合
    天井は仕上材を省いた打ちっぱなし構造3m。各種音楽ジャンルワンフロアに併設。プロモーションビデオを流す。
  • 百貨店売場フロアの場合
    ブティック専門店フロアとインテリア用品売場フロアが併設。上品なディスプレイと間接照明。天井高は3m。非常放送と兼用。

4.必要音圧の設定

  1. 暗騒音レベルの確認

    暗騒音とは、その空間に特有の喧噪のことです。発生源は場所によって多様で、他人の会話、雑踏、空調、各種機械、各種交通機関などが混ざり合ったものです。BGMに必要な音量(音圧といいます)は、この暗騒音レベルより少しだけ大きな音量(後述)です。以下に主な施設における平均暗騒音レベルを記します。

    1.レストラン・飲食店 2.百貨店売場フロア 3.CDショップ 4.パチンコ店
    60〜65dB 65〜70dB 80〜85dB 85〜90dB
  2. BGMの音圧

    ヒトが2種類以上の音を聞く際、1つの音が大きくなると他の音が聞きづらくなったり聞こえなくなったりします(この現象をマスキングといいます)。そのため、BGMは暗騒音レベルより一般に3dB程度(※)大きくすると良いとされてます。(※:一般拡声目的では6dB程度といわれています)

    1.レストラン・飲食店 2.百貨店売場フロア 3.CDショップ 4.パチンコ店
    65〜70dB 70〜75dB 80〜90dB 90〜95dB
  3. スピーカーの配置間隔と台数の決定

    スピーカーの台数を決定するには、根拠として音響理論の知識が必要なことも確かですが、今回は店舗BGMシステムプランニングに必要と思われる目安をご紹介します。

    天井埋め込みスピーカーを分散配置する場合

    天井高(m) スピーカー間隔(m) 一個のスピーカーがカバーする面積(m²)
    2.5以下 2.5〜5 12.5〜25
    2.5〜4.5 3〜6 18〜36
    4.5以上 4.5〜9 40〜81

    間隔を広くとればそれだけ音圧にムラが生じます。最大間隔をとった場合で3〜4dBの音圧差が生じますので、スピーカー台数は余裕をもって計画しましょう。

    ボックススピーカーを分配配置する場合

    ボックススピーカーを分配配置する場合

    スピーカー1台あたり、直径7〜8mの円内をカバーするイメージで配置すると良いでしょう。

5.インピーダンスとスピーカー配置

  1. ローインピーダンス方式
    アンプとスピーカーの間にトランスを介在させず、直接スピーカーを駆動する方式です。ホームオーディオやカーオーディオなど様々なシーンで使われていますが、配線距離が長くなると音質が劣化するなどの欠点があります。
    →[音のことば] ローインピーダンス
  2. ハイインピーダンス方式
    一台のアンプに多数のスピーカーをつないだり、スピーカーの配線距離を長く引き回せるように考案されたもので、アンプとスピーカーの間にトランスが挿入されており、「定電圧伝送」とも呼ばれています。音質はアンプとスピーカーだけでなくトランスの性能に左右されます。
    BGM用サウンドシステムには、一般にローインピーダンス方式が高音質を得やすくて好ましいとされていますが、先述したように配線距離が長くなると音質が劣化するため注意が必要です。
    →[音のことば] ハイインピーダンス
  3. スピーカー配線
    ローインピーダンスの場合、音質劣化を防ぐには、スピーカーとアンプ間のケーブル配線距離を太く短くする必要がありますが、経済性を考慮した場合のケーブル導体断面積推奨値は配線距離20mで1.25mm²(理想的には2.0mm²)程度です。
    20m以上の配線距離が見込める場合は、ハイインピーダンスタイプのシステムを選定するとよいでしょう(1.25mm²ケーブルで300m程の配線が可能です)。

スピーカーケーブル最大延長距離の目安

ケーブルは線種、メーカーにより異なります。延長距離は目安としてください。

線種(単線) ハイインピーダンス ローインピーダンス 備考
断面積(mm²) 径(mm) 軟銅(m) 硬銅(m) 軟銅(m) 硬銅(m)
- 0.8 140 134 11 11
- 0.9 185 - 15 -
- 1.0 219 210 18 17
- 1.2 316 303 25 24 IV・HIV
HP等の
使用時(※)
- 1.6 561 538 46 43
- 2.0 885 858 71 69
- 2.6 1,493 1,449 119 116
- 3.2 2,262 2,193 181 175
線種(より線) ハイインピーダンス ローインピーダンス 備考
断面積(mm²) 径(mm) 軟銅(m) 硬銅(m) 軟銅(m) 硬銅(m)
0.9 1.2 239 230 19 18
1.25 1.4 308 292 24 23
2.0 1.8 561 519 44 42
3.5 2.4 982 924 77 74 IV使用時(※)
5.5 3.0 1,502 1,441 120 115
8.0 3.6 2,165 2,075 173 166

(*)IV:600Vビニール絶縁電線 HIV:600V二種ビニール絶縁電線 HP:耐熱電線の名称のひとつ

6.ステレオとモノラル

私たちがホームオーディオやTVで慣れ親しんでいるステレオ再生は、左右に設置されたスピーカーの中央付近で立体的な音像が得られるようになっています。しかし、スピーカーの中央付近(スイートスポット)を外れた場合、遠いほうのスピーカーの音情報が聞き取りにくくなり、満足なステレオ効果は得られません。
店舗空間のBGM音源としては、有線・CDなどのステレオ音源が主流ではありますが、利用客が特定の場所に長く留まることは考えにくいので、音情報が居場所によって左右されないモノラル再生のほうが一般的に向いているといえます。

7.スピーカーの仕組みと極性合わせ

スピーカーの仕組みと極性合わせ

一般的なスピーカーユニットは、永久磁石、振動板、そして電気信号を振動に変換するボイスコイルから構成されています。
電気信号がボイスコイルに入力されると磁力が発生し、周囲の永久磁石の磁界との間の作用で、吸引と反発が発生(フレミングの法則)し、その際、スピーカーユニットの振動板が前後に振幅して空気を振動させることで音が出ます。ボイスコイルには極性(+−)があり、接続によって振動板を前へ押し出すか引き込むか正反対の動作をします。

同一空間で複数のスピーカーを設置する場合、この極性を合わせておかないと、お互いのスピーカーが音響エネルギーを相殺(専門用語で相互干渉)し満足な音圧感が得られないだけでなく、利用客に違和感を与えることになります。
特に、大きな音が必要なパチンコ店などでは、極性が合っていないのに強引に大きな音を出そうとすると、スピーカーやアンプに負担をかけてしまい、最悪の場合は機器破損の危険もありますので注意が必要です。

スピーカーの仕組みと極性の合わせ

アンプのワット数について

選定したスピーカーの機種と本数をもとに、使用するアンプの機種を決定しますが、ローインピーダンス/ハイインピーダンスの仕様の違いで、適正なアンプ出力(W)数の求め方が異なります。また、両者は混在して使用するとアンプ破損の原因になりますので注意が必要です。

  1. ローインピーダンス
    ローインピーダンス
    アンプ1チャンネルにつきスピーカー1台の接続が基本です。スピーカーの許容入力数のうち、「連続プログラム入力(RMS)」のW数と同数値〜その半分程度のW数のアンプを選ぶようにしましょう。
  2. ハイインピーダンス
    ハイインピーダンス
    使用するスピーカーの合計W数以上のW数のアンプを選びます。アンプのW数以上のスピーカーを接続した場合、アンプの故障の原因になりますので注意が必要です。

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