愛媛県西条市 様
災害などの緊急時の情報伝達や行政情報の伝達に。IP告知放送システムで市内244カ所の自治会放送設備に一斉放送。
概要
南には西日本最高峰の石鎚山、北には瀬戸内海を望む西条市。松山の道後温泉、今治の鈍川温泉とともに「伊予の三湯」に数えられる本谷温泉もよく知られています。
同市の災害時一斉広報手段は消防用のアナログ無線放送で行われていましたが、アナログ方式周波数の使用期限の到来に合わせ、国の緊急地震速報システムなどと連携する「同報系防災行政無線システム」のデジタル化に取り組んでおられました。さらに、災害時に十分な音声到達範囲を確保して情報を伝達できるように、集会所や自治会の放送設備をネットワーク化し、防災行政無線放送と同様の内容を放送できる「IP告知放送システム」をTOAで構築。災害から市民の安全・安心を守り、きめ細かな行政情報の伝達に貢献しています。
納入情報
納入先 | 愛媛県西条市 様 |
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納入品 | IP告知放送システム |
納入時期 | 2016年3月 |
採用背景 | もともとは消防用「サイレン吹鳴広報制御装置」で災害情報の伝達が行われていましたが、アナログ方式の消防無線周波数の使用期限にともない、「同報系防災行政無線」のデジタル化を推進してこられました。さらに、より十分な音声到達範囲を確保するため、別の情報伝達手段を検討されていました。 |
課題と解決のポイント
課題
- 災害などの緊急時の情報伝達の際に、防災行政無線だけでは十分な音声伝達範囲を確保することができない
- 災害情報以外にも、行政情報や市民の安全・安心につながるきめ細かな情報伝達を行いたい
- 市役所職員が操作しやすいシステムにしてほしい
- 行政からの情報伝達時に負担の大きかった自治会長の負担軽減を図りたい
解決のポイント
- 市内244カ所の自治会所有の放送設備と市役所内の防災行政無線親局をネットワーク化。IP告知放送システムを使って親局から災害情報や行政情報を一斉放送
- 行政や警察、消防などからの情報発信にも対応。市内一斉や支所4グループ、地区28グループごとの放送も可能に
- タッチパネルや設定用PCで放送先や優先度、音量などが設定でき、マイク放送や定時パターン放送などが可能に
- 市役所から一括及び個別に各集会所へ放送。自治会長の負担も軽減
詳細
背景
アナログ方式の消防無線周波数の使用期限にともない、Jアラートやメール配信システムなどの同報系防災行政無線の整備に着手。
西条市では市民向けの災害時一斉広報手段として、アナログ無線の消防用「サイレン吹鳴広報制御装置」が使用されていました。しかし、アナログ方式の消防無線周波数が平成28年5月31日までの使用期限と定められたため、緊急時に迅速・確実に一斉放送ができ、国のJアラート(※1)やLアラート(※2)、市のメール配信システムとも連携させる「同報系防災行政無線システム」の構築を進められていました。
(※1)Jアラートとは、国民保護情報や緊急地震速報を伝える「全国瞬時警報システム」
(※2)Lアラートとは、災害情報を地域の住民に迅速かつ確実に届けるローカル(Local)な緊急警報
課題
災害などの緊急時に、確実に市民に情報伝達が行えるよう十分な音声到達範囲を確保できるシステムを構築したい。
従来から使用していた消防無線の市内57カ所の屋外拡声子局では音声到達範囲が不足しており、避難所となる学校や福祉関係の施設などをカバーしきれていませんでした。そこで、平成26年度から既設の消防無線57カ所の更新を行うとともに、新たに25カ所の屋外拡声子局を増設。加えて、戸別受信機を公民館や学校、福祉関係施設197カ所に設置し、うち165カ所については防災行政無線と館内放送設備を接続して、災害情報や行政情報を放送できるようになりました。さらに、災害などの緊急時に確実に情報伝達が行えるよう、より十分な音声到達範囲を確保するため、きめ細かに情報伝達できる放送システムの構築が求められました。
また、市役所からの行政情報を市民に伝達する際に、以前は各自治会長に放送の依頼を行い、自治会の放送設備を使って伝達されていたため、自治会長には負担をかけていました。そのため、自治会長の負担も軽減できるよう、市役所から各自治会へ一斉に情報伝達できるシステムが求められました。
解決策
市内の集会所や自治会所有の放送設備と防災行政無線親局をネットワーク化。IP告知放送システムにより、防災行政無線の内容を244カ所の自治会放送設備に放送。
音声到達範囲の拡充、防災情報の確実な伝達、行政情報のきめ細かな伝達を行うために導入されたのが、IP告知放送システムです。インターネット回線によって防災行政無線の親局と集会所や自治会が所有する屋外放送設備244カ所をつなぎ、防災行政無線と同じ内容を放送することにより、放送の届かないエリアが低減され、一層きめ細かな災害情報や行政情報の伝達を実現しました。
さらに、「河川水位監視システム」では、水位監視装置からのアラーム情報により、IP告知放送システムと連動した河川情報の伝達も行っています。
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IP告知放送システムと同じタイミングで整備された「河川監視カメラシステム」。大雨などの災害時に、市内の河川7カ所に設置されたライブカメラで水位や流量の確認を行い、必要に応じて市役所からスピーカーで放送を行うほか、電光掲示板での文字表示を行う。また、カメラ映像はアプリ「防災情報さいじょう」でも確認できる。
インタビュー記事
- 「災害や警報、行政情報の放送はもちろん、市民の安全・安心な暮らしにつながる情報伝達の幅を拡げていけたら。」
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西条市 市民安全部 危機管理課
日野 徳久 様
- -IP告知放送システムをどのように活用されていますか?
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もともと市内57カ所に設置されていた「サイレン吹鳴広報制御装置」は消防用無線だったため、サイレン吹鳴と防災関係の放送以外では火災予防啓発にしか使用することができませんでした。今回の工事では行政も取り込んで「防災行政無線」となったので、行政情報も放送することができます。
たとえば、選挙の啓発放送や期日前投票の案内放送に使用しています。以前は各自治会の会長さんに依頼状を送付して時期を指定した放送をお願いしていましたので、かなり負担になっていたかと思います。現在では市役所から一括して放送できるようになったことで、かなり負担が軽減されたのではないでしょうか。
最近では、警察からの依頼で、行方不明の方の捜索にもよく放送を利用しています。 - -IP告知放送システムの使い勝手はいかがですか?
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ワンタッチで起動できますし、操作方法も視覚的に理解できてわかりやすいです。市役所の危機管理課には私を含めて7名が在職していますが、全員扱うことができます。「チャイムを鳴らして放送し、最後にまたチャイムを鳴らす」という手順さえ理解しておけば、操作自体はとても簡単です。マニュアルも不要なほど、導入当初からスムーズに使用できています。
リピート放送もできるのですが、大部分の放送は生声で行っています。なるべくゆっくり話すようにしていますが、どのような声がいいのかはまだ試行錯誤中ですね。 - -今後の活用について、どのようにお考えですか?
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市民の安全・安心のために、イノシシや猿といった鳥獣被害の情報や、PM2.5や光化学スモッグなどの気象警報についても放送したいと考えています。
また、このシステムに対しては警察からの期待も大きいようで、「行方不明者の情報提供のお願いや特殊詐欺の警戒情報を流してほしい」という依頼が頻繁に寄せられています。
今後、市民の方の安全で快適な暮らしにつながる情報提供ができるようにうまく運用し、それを定着させることによって、「導入してよかった」と感じていただければ幸いです。いろいろと試しながら、市民の方への情報提供の新たな可能性を探っていきたいですね。
- 愛媛県西条市の概要
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愛媛県では3番目に広い面積を有する、自然豊かな土地。農業・水産業が盛んに行われる一方、大企業の製造工場が建ち並ぶ四国屈指の工業集積地帯でもある。全国でも珍しい被圧地下水の自噴地帯が広範囲にわたって形成されており、良質な地下水が豊富に涌き出す「水の都」としても有名。環境庁の「名水百選」にも認定されている。四国八十八カ所のうち、六十番札所(横峰寺)から六十四番札所(前神寺)の五霊場が立地する歴史ある土地であり、観光地としても人気が高い。