福井県敦賀市 様
全国初の地域WiMAXを活用した防災情報伝達システム
概要
無線を経由するIP告知放送システムとしては、全国で初めて地域WiMAXが活用されており、有線ネットワークも併用して通信インフラの冗長化を実現した新しい防災情報伝達システムです。敦賀市内に設置された屋外放送設備(子局)は、IP告知放送だけでなく映像やインターネット利用など様々なコンテンツを住民の皆様へ平等に利用していただくための役割も想定しています。
納入情報
納入先 | 福井県敦賀市 様 |
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納入品 | IP告知放送システム、屋外拡声機器 |
納入時期 | 平成22年3月完成 |
採用背景 | EPZ(*1)圏内の防災行政無線スピーカーの劣化に伴なう設備更新において、ブロードバンド化促進を担う地域WiMAX活用に適しており、迅速に情報伝達できることが評価され、採用されました。 |
課題と解決のポイント
課題
- コスト:経年劣化したEPZ(*1)圏内既設スピーカー設備の更新コストを抑えたい
- 伝達能力:整備予定のJ-ALERTなどの防災情報を迅速に拡声したい
- 防災機能:避難所の防災機能を高めたい
解決のポイント
- コスト:地域WiMAX(既設インフラ)の有効活用と、それに接続してサーバーレスでシステム構築でき、低コストを実現
- 伝達能力:起動に時間が掛からず、迅速な放送が可能
- 防災機能:自局放送(*2)による周辺避難所への防災情報の提供が可能
(*1)Emergency Planning Zone:原子力発電所周囲の10キロ圏内の防災対策を重点的に構築すべき地域
(*2)屋外放送設備の収納盤内マイクを使った放送。単独放送。
詳細
背景
原子力発電所の安全対策に向けて様々な地域防災手法を検討
屋外スピーカーの経年劣化
地域WiMAXが稼動
原子力発電所立地地域である敦賀市では、常日頃から「原子力の安全対策に行政としてどう関っていくか?」というテーマに基づき約20年間地域防災に取り組まれてきました。
地域住民へ平等に且つ迅速に情報を伝達し、共存・共栄を図っていくという目標から、様々なハードウェア・ソフトウェアを駆使した地域防災手法を検討されていました。
その中の一つに、原子力発電所周囲のEPZ圏内に設置されている老朽化の進んだ防災行政無線スピーカーの更新も含まれていました。
同市では、情報基盤整備を担う株式会社嶺南ケーブルネットワークが株式会社フジクラと協力して、地域WiMAXサービスの運営を開始していました。
- WiMAXとは
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無線LANの国際的な標準規格の1つです。パソコンやPDA等で利用しているいわゆる無線LANの規格であるWi-Fiとは違い屋外での利用を想定しており、データの最大伝送距離は約10km、伝送速度は最大75Mビット/秒(条件にもよるが実際のサービスではADSL並み)
- 地域WiMAX
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総務省では全国バンドと地域バンドを設定しています。地域バンドとは、市区町村単位で割り当てられる10MHz幅の周波数帯のこと。
この地域バンドを活用した無線サービスのことを地域WiMAXと呼ぶ。この地域バンドを各地域でブロードバンド事業を営む通信事業者に割り当て、ラスト・ワンマイルの通信手段として利用できるようにすることによって、ブロードバンド・ゼロ地域の解消に役立てることが目論まれています。
電波の到達範囲が広い等の特徴を持つため、固定無線としてだけではなく、移動体通信としての利用も着目されています。
課題
導入コストを抑えた防災情報伝達システム
新たに整備されるJ-ALERTなど防災情報を迅速に拡声
防災行政無線システムを含めたスピーカー更新には多額の費用が掛かるため、地域WiMAXを活用することで導入コストを抑えられ、且つ、新たに整備されるJ-ALERTや防災情報を速やかに伝達できる音声伝送システムの必要性が高まりました。
また、避難所へ避難して来た住民への防災情報伝達の必要性も求められました。
解決策
地域WiMAXに接続して音声伝送が可能なIP告知放送システムを採用
サーバーレスで導入コストを低減
起動時間が早く迅速に放送でき、自局放送機能も装備
ネットワークを経由してリアルタイムで高音質伝送して放送できるIP告知放送システムは、WiMAXにも適合します。システム内にはサーバーが不要なため、サーバー導入コストはもちろん、毎月のメンテナンス費用も不要です。システムの立ち上がりも早く速やかな放送を実現します。屋外放送設備から周辺への拡声放送(自局放送)も可能で、放送中でもJ-ALERTなどの優先度の高い放送を割り込ませることができますので、重要な放送を聞き逃すこともありません。
通信インフラ冗長化のため、屋外放送設備へは株式会社嶺南ケーブルネットワークが運営している有線ネットワーク網(CATVネットワーク網)も敷設されており、ネットワークはWiMAXとのハイブリッド方式になっています。万が一の通信不良時でも確実に放送することができます。
■敦賀市役所防災センター(主局)
音声信号をデータへ変換するIP告知送信機NX-220CT、情報の送信を行なう操作卓や自動放送を制御する装置(タイマーや音源装置)などが設置されており、屋外放送設備での放送状況について応答信号により確認できるシステム体制を整備しています。
主に行政・消防・原子力発電所に関わる緊急情報を送出しています。
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●放送内容
マイク即時放送
定時放送
手動再生放送
遠隔入力放送
●放送先選択
一斉
グループ:最大11グループを個別に選択して放送可能
●放送優先順位
緊急放送>定時放送>通常放送
■屋外放送設備(子局)
防災センターから送出された緊急情報をEPZ圏内に音声で同報するための設備で、16箇所に設置されています。
収納盤内には、アンプや受信したデータを音声信号へ変換しアンプを起動制御するIP告知端末NX-220AFが入っています。マイクロホンを装備しており、周辺住民へ情報伝達する自局拡声放送も可能です。
地域WiMAX基地局として周囲の映像伝送やインターネット利用などブロードバンドゼロ地域解消の役割も期待できます。
システム図
インタビュー記事
- 「地域WiMAX活用は低コストかつ魅力的なシステムです。」
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株式会社嶺南ケーブルネットワーク 技術部長 大岸朝秀氏
- 「敦賀市地域防災情報システムを運用する上で絶対不可欠な設備だと考えています。」
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敦賀市総務部 情報管理課長・IT推進室長 杉本博文氏
- 「TOAの防災用屋外スピーカーは以前から信頼していました。」
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株式会社嶺南ケーブルネットワーク 通信技術担当 顧問 川端純一氏
- -全国初の地域WiMAXを活用した防災情報伝達システム、構築するポイントは何でしたか?
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大岸氏
きっかけは敦賀半島内EPZ地域に設置してある防災無線スピーカーの経年劣化対策でした。更新調査をした結果、多額の費用がかかるとわかり、一箇所に多くのスピーカーを配置するより分散配置したほうが費用が抑えられると考えていたのです。最終的に分散配置の案は無くなりましたが、以前より弊社が運営していたWiMAXサービスの通信とTOAのIP告知放送システムが連動できることを知り、伝送路として使おうと考えました。無線通信だけだと不安だったので、有線ネットワークも利用しましたが設置コストを抑えることができました。
杉本氏
敦賀市では元来防災対策に力を入れております。原子力発電所が多数立ち並び、雪害対策も毎年必要です。ポイントは敦賀市地域防災情報システム(下図)を平等かつ迅速に住民の皆様へ伝達することでした。敦賀市は原子力発電所が立ち並ぶ半島エリアや市内、中山間部と地理的条件が多岐にのぼり、1つの防災情報(音声コンテンツ)を様々な手段で伝達しなければいけません。株式会社嶺南ケーブルネットワーク様の防災専用チャンネルをはじめとして、メール、FMラジオ、そして地域WiMAXを活用した屋外放送設備は絶対不可欠な設備だと考えています。
川端氏
お二方がお話した通り屋外放送設備は様々な防災情報伝達手段でone of themなのです。地域防災を構築する上で全国共通、絶対不可欠な設備です。都市圏は除いたとして、地方は防災に対して<共助の仕組み>が重要です。屋内連絡はTVやラジオ、電話で構築できますが屋外はやはり屋外スピーカーです。TOAの防災用屋外スピーカーは以前より信頼していました。
地域防災手法を検討していた敦賀市では「地域防災情報システム(下図)」を計画し、整備を進められています。様々な手段で防災情報を住民へ伝達することが可能になります。地域WiMAXを活用した屋外放送設備はその一部として重要な働きをしています。
- -設置後の評価。敦賀市様の今後の防災対策展望についてお聞かせ下さい。
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杉本氏
EPZ内に設置した屋外放送設備は以前設置していた防災スピーカーと本数や位置は変わりませんが、明瞭度が高くなったせいか「音量が大きくなった。」という感想が聞こえます。防災情報(音声コンテンツ)伝達の有効性をさらに強く感じているところです。現在、中山間部はこのような屋外放送設備はありません。地域WiMAXの基地局を同エリアへ増設補強する計画があり予定では21基を想定しています。中山間部においても屋外放送設備の設置が進むかもしれません。
- 敦賀市の概要
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福井県南部(嶺南)の敦賀湾に面している都市。
港湾を中心に栄え、北陸と関西を結ぶ位置から鉄道や道路の要地ともなっている。
原子力発電所立地地域であり常日頃から「防災対策事業」を策定し地域防災に取り組まれている。 - 株式会社嶺南ケーブルネットワークの概要
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福井県敦賀市をサービスエリアとするケーブルテレビ事業及びインターネットサービスプロバイダ事業を行っている。略称はRCN。
地域住民へ平等かつ迅速に情報発信するための<防災放送チャンネル>を中心に、敦賀市防災センターから提供できるあらゆる発信サービスを運用している。 - 株式会社フジクラの概要
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東京都江東区に本社を置く通信ケーブルや電線を製造するメーカー。
1885年の創業以来、電線・ケーブル製造で培った“つなぐ”テクノロジーで、くらしと社会の幅広い分野に製品を提供。
光ファイバ世界3位。携帯電話・デジタルカメラ等に使われるフレキシブルプリント基板で世界2位。
地域WiMAXではIEEEで制定されている無線通信規格の製品を取り扱い、現在は各ケーブルテレビ会社と共に地域WiMAXの普及促進活動にも尽力している。
お客様のご要望に合わせてモバイルWiMAXサービスに必要なシステムを提案し、コンサルティング、導入・構築、運用サポート、端末・サービス提案までワンストップで提供する。