浦上天主堂 様
(長崎教区カトリック浦上教会)
概要
言葉の響きを大切にした音創りで、歴史ある教会の音空間を演出。音の拡散や残響を抑えた、誰の耳にも明確に聴こえる音響システム。
平和公園や、原爆被害の痛ましさを今に伝える原爆資料館に隣接する小高い丘の上に、天に向かって永遠の平和を祈るように建つ浦上天主堂。信仰の自由を得た人々の“祈りの城”として「東洋一」とうたわれた天主堂が原爆投下によって消失したあとも、熱心なキリスト教信徒さん達の力で再建され、日本で信徒の最も多い小教区の中心的教会として、県内はもとより県外からも連日たくさんの人々が訪れています。長崎県内の教会のなかでも最大級の広さをもつ礼拝堂は、キリストの生涯を描いた美しいステンドグラスから光が差し込み、大小約4,000本もパイプを備えたパイプオルガンが荘厳な調べを奏でています。
この美しい佇まいと神聖な雰囲気を讃えた浦上天主堂に、TOAのスピーカーをはじめとした音響設備一式をご採用いただきました。浦上天主堂では、以前から建物の構造上音が反射しやすく音の残響時間が長いため、特にご高齢の信徒さんから説教の声が聴きとり難い、場所によって言葉がよく聴こえないところがあるなど不満の声が寄せられていました。そこでTOAでは、専門スタッフによる音響測定を実施。広い面積をもつ礼拝堂内の7カ所で音の明瞭度や聴きやすさなど、音の反響の特性を分析したうえで、最も適したスピーカーの選定と配置を決定しました。
礼拝堂側面には、メインスピーカーとして、天井や床への音の拡散が少ない指向性制御タイプのスピーカーシステムを採用。礼拝堂を8つのエリアに区切り、各エリアごとに合計8台設置し、直接音をしっかり届かせることで反響音に負けない高い明瞭度を確保しています。また、納入前の音響測定で特に音の明瞭度が低かった祭壇前の信徒席前方列付近には、狙った範囲に集中的に音を届けるサウンドアロースピーカーを左右2台設置し、音の死角となっていた部分をカバー。これにより教会内部のどこに座っていても均一に音が届くようになりました。メインスピーカーは、壁面のスペースに特別仕様の木枠カバーによって収められ、内観の荘厳な雰囲気をこわさないようデザイン的な配慮をしています。
この他にも、少数編成の聖歌隊の歌声を拾うための集音マイク、神父様や代表の信徒さんが自分の声を確認しながらお話しができる祭壇下のモニター用スピーカーなど、随所に用途に応じたマイク・スピーカー類を新たに設置。スピーカーやマイクは別室にあるPAシステムで一括制御されるようになっており、コンソールの電源をいれるだけで、あとは音量を調整するなど最低限の操作ですむような簡単設定になっています。
納入後は、課題となっていた場所による音の聴こえにくさも飛躍的に解消され、なにより聖書朗読など「語る言葉」が聴き取りやすくなったこと、メインスピーカーが木枠カバーの自然な仕上がりで美観が保たれていることなどが神父様をはじめ信徒さんの間でも好評で、教会で行われる様々な行事でフル活用していただいています。