十七文字の音
元禄二年の夏。『奥の細道』の旅で裏蔵王の山里に立ち寄った芭蕉は、「山寺や石にしみつく蝉の声」という句を詠んだ。
元禄二年の夏。『奥の細道』の旅で裏蔵王の山里に立ち寄った芭蕉は、「山寺や石にしみつく蝉の声」という句を詠んだ。
昔から日本人は、自然の静寂の中に響く心地よい音を創り出す名人だったようだ。
子どもの頃、波の音が聞こえると言われて、貝殻を耳にあてた経験はないだろうか。
五月雨は、パラパラ。六月の梅雨はシトシト。そして夕立は、一転空を曇らせ急にザーザーと勢いよく降る。
山口県では昔懐かしい蒸気機関車が復活し、今なお人々に親しまれている。のんびりとした田園風景の中を走り抜けるSLから響きわたる
様々な音が氾濫している街中で、いつもは他の音に消されて聞こえない音が、ふと耳に入る時、静かだなと感じた経験はないだろうか。静けさとは、全く音の無い世界ではなく、穏やかな「心」の音環境ではないだろうか。