充電池の種類と特徴
今や私たちの生活に欠かせない充電池。スマートフォンやノートパソコンをはじめ、イベントや催事、課外活動での拡声に持ち運び可能なメガホンやポータブルワイヤレスアンプ、ワイヤレスマイクなどにも広く使用されています。
今回の特集では、そんな充電池の歴史や種類、それぞれの特徴などを分かりやすくご紹介します。
電池の種類
電池にはさまざまな種類がありますが、大きく分けると化学電池と物理電池の2種類です。
化学電池とは、内部の化学反応によって電気を起こす電池のこと。なかでも、エネルギーを使い切る乾電池などは一次電池、充電によって繰り返しエネルギーを蓄えられる充電池は二次電池と呼ばれます。私たちが普段よく使っているのは、ほとんどがこの化学電池です。
これに対して、光や熱などの物理的なエネルギーを電気エネルギーに変換する装置を物理電池といい、環境に優しく無尽蔵に得られるという利点があります。
また、化学電池・物理電池に続いて、新たに研究されているのが生物(バイオ)電池です。酵素や微生物の生化学的なエネルギーを電気エネルギーに変換するというしくみで、実用化はされていませんが未来のエネルギー源として期待が高まっています。
充電池のしくみ
充電池は電解液と、2種類の金属からなる電極(プラス極・マイナス極)で構成されています。電極のうちひとつには電解液に溶けやすい物質が、もうひとつには電解液に溶けにくい物質が用いられます。
すべての物質は原子から構成されており、原子核にあるプラス電荷と、電子のマイナス電荷が釣り合った中性の状態です。
充電池に使われる金属も最初は中性ですが、電解液に溶けやすい金属を浸してみると、電子を残して溶け始めて電解液の中を動き回る陽イオンとなります。電極にはマイナスの電子が残されるため、マイナスを帯びたマイナス極となるのです。
電極に残されたマイナスの電子は、導線を通って電解液に溶けにくい金属、つまりプラス極の方へと流れ込みます。これが発電のしくみです。
プラス極では流れてきた電子と周囲の陽イオンが結びついて原子となり、固体として現れる(析出する)ため、徐々に太くなっていきます。マイナス極の金属が溶け切ってしまうと放電できなくなりますが、繰り返し充電して使用できるのが充電池の特徴。外部の電源に接続してエネルギーをかけると、今度は放電時とは逆にプラス極の金属が溶け出して電子がマイナス極の方へ流れ込みます。電解液の中に溶け込んでいた陽イオンとプラス極から流れてきた電子が結びつくことで一度は痩せた金属が太り、放電前の状態に戻っていくのです。
充電池開発の歴史
充電池が誕生したのは、イタリアの物理学者 ボルタが電池を発明してから約60年後の1859年のこと。フランスの科学者であるプランテが、鉛蓄電池を発明しました。1880年代に入ってから量産されるようになり、日本では1895年にはじめて試作されています。
1899年には、スウェーデンのユングナーがニカド電池を発明。ほぼ同時期にアメリカのエジソンも近い理論のニッケル蓄電池(鉄電池)を発明しましたが、量産化されるようになったのはユングナーのニカド電池でした。1990年にはニカド電池の後を継ぐ形で、ニッケル水素電池が誕生。さらに、ニッケル水素電池の誕生からやや遅れた1990年前半には、リチウムイオン電池が実用化されました。ニッケル水素電池、リチウムイオン電池を商品化したのは、いずれも日本の企業です。小型で軽いニッケル水素電池は、携帯電話やノートパソコンの普及に合わせて瞬く間に広がっていきました。
充電池の種類
現在使われている充電池は4種類。それぞれの原理と特徴を見てみましょう。
鉛蓄電池
マイナス極に鉛、プラス極に二酸化鉛、電解液に希硫酸を用いる大容量電池。自動車の普及にともなって発達し、現在でも自動車のバッテリーとして広く使用されています。
メリット
- 材料となる資源が豊富で、コストが低い
- 過充電に強い
デメリット
- 容量あたりの発電できるエネルギー量が小さい
ニカド電池
「ニカド」とはニッケルとカドミウムのことで、マイナス極にカドミウム、プラス極にオキシ水酸化ニッケル、電解液に水酸化カリウム水溶液が用いられます。電圧は乾電池とほぼ同じ約1.2V。コードレス電話や電動工具、非常照明などに使用されています。
メリット
- 耐久性が高い
- 大電流で使用できる
デメリット
- 自己放電が多い
TOAではこのニカド電池を非常用放送設備で使用しています。
非常用放送設備では、いつ発生するか分からない非常時に確実に放送し、安全に避難誘導する必要があり、他の電池では耐久性や電流量、使用温度、サイズなどに問題があることから、ニカド電池を採用しています。
なお、TOAで非常用放送設備に採用しているニカド電池は、消防法上の技術基準に適合していることを認定している団体であるJEA蓄電池設備認定委員会の認定に合格しているため、火災や災害などでの停電時であっても非常電源を確実に確保することが可能です。
また、ニカド電池は希少な資源であるニッケルやカドミウムを使用しているため、リサイクルを行っており、環境面にも配慮されております。(※リサイクルは、一般社団法人JBRCで行っています。)
ニッケル水素電池
マイナス極に水素吸蔵合金、プラス極にオキシ水酸化ニッケル、電解液に水酸化カリウム水溶液が用いられており、ニカド電池のマイナス極に使われているカドミウムを、水素吸蔵合金に置き換えた構造です。携帯電話やデジカメなどに搭載されているほか、ハイブリッドカーや電気自動車にも使用されています。
メリット
- 小さな容量でも大きなエネルギーを生み出せる
- カドミウムを使わないために環境に優しい
デメリット
- 水素吸蔵合金が高額でコストがかかる
- 満充電時に大きな発熱をともなう
TOAではこのニッケル水素電池をワイヤレスアンプやデジタルワイヤレスマイクで使用しています。
従来のアナログワイヤレス機器では、コストが安く、頻繁な充電に対して過充電耐性の強いニカド電池を採用してきましたが、最近では、充電器に過充電対策を施すことで、電池への負荷を減らすことができ、また、環境への配慮及び長時間使用を可能にするため、ニカド電池より高容量のニッケル水素電池の採用が増えてきています。
リチウムイオン電池
マイナス極に炭素材料、プラス極にリチウム含有金属酸化物、電解液には有機電解液を使用。大容量かつ小型であることから、多くのモバイル機器に搭載されています。最近では電動アシスト自転車や電気自動車にも使われるようになりました。
メリット
- 小さな容量でも大きなエネルギーを生み出せる
- 充放電エネルギー効率が良い
デメリット
- コストがかかる
- 有機電解液には高い安全確保策が必要
TOAではこのリチウムイオン電池を赤外線会議システムで使用しています。
アンプ、スピーカーを内蔵し、赤外線による双方向通信を行う赤外線会議システムでは、ワイヤレス機器に比べ、消費電流が多くなるため、最もエネルギー容量の多いリチウムイオン電池を採用しています。
次世代の充電池
現代の生活で非常によく使われているリチウムイオン電池ですが、新たな蓄電池の開発も進められています。そのひとつが、ナトリウムイオン電池。リチウムイオン電池よりも電圧や容量あたりの発電できるエネルギー量が小さいという欠点はありますが、限られた地域でしか採掘できないリチウムに対して、ナトリウムは海水から取り出せるという大きなアドバンテージがあります。2015年には、フランスの国立研究センターのグループがナトリウムイオン電池のプロトタイプを公開しました。
また、「夢の電池」と呼ばれる全固体電池の普及も現実味を帯び始めています。全固体電池とはその名の通り、電解液ではなく固体の物質にイオンを通す電池のこと。すでにペースメーカーなどには使われていますが、まだまだ一般化はしていません。しかし2016年、トヨタ自動車と東京工業大学の研究グループが、リチウムイオン電池の3倍以上の出力特性をもつ全固体電池の開発に成功したことを発表し、前進の兆しを見せています。