ラインアレイスピーカーの「有効距離」について
均一で明瞭な音を伝えることに優れたラインアレイスピーカー。
コンサートやイベント会場などで幅広く取り上げられており、理想的な音空間を提供しております。
今回は、ラインアレイスピーカーの特長とその有効距離についてご紹介いたします。
通常のスピーカーとラインアレイスピーカーの違い
通常のスピーカーでは音が水平方向にも垂直方向にも広がるのに対し、ラインアレイスピーカーでは垂直方向には広がらず水平方向にだけ広がる特性を持っています。
通常のスピーカーは「点音源」、ラインアレイスピーカーは「線音源」と分類され、それぞれに特長があります。
1つの点から音が広がる「点音源」
通常のスピーカーでは、一つの点(音源)から水平方向と垂直方向に音が進み、球面状に広がります。
その結果、音量を上げると天井や壁にも反射するため音の明瞭性に影響を与えるうえ、ハウリングも起こしやすくなります。
通常のスピーカー(点音源)の特性
- 水平方向にも垂直方向にも球面状に音が広がる。
- 球面の表面積は4πr2(rは音源からの距離)。
そのため距離が倍離れた地点では表面積が4倍となるためエネルギーは1/4となり、音源位置と比べて6dB音が減衰する。
通常のスピーカー(点音源)のデメリット
- 距離による音の減衰が大きい。
- 天井や壁に反射して、明瞭性を損ないやすい。
- 遠方に音を届けようとすると、近場でうるさく、同時にハウリングを起こしやすい。
音源を線上に集合させた「線音源」
ラインアレイスピーカーは、簡単に言えば音源となるスピーカーユニットを縦に一直線に積み重ねて配列したものです。スピーカーから出された音は円筒状に放射され、垂直方向への音の広がりを抑えることで余分な反射を避け、狙ったエリアに音を放出することができます。
ラインアレイスピーカー(線音源)の特性
- 水平方向には広がるが、垂直方向にはほとんど広がらない。
- 円筒の表面積は2πrh(rは音源からの距離)。
倍の距離はなれた地点では表面積が2倍となりエネルギーが1/2となるので3dBしか音が減衰しない。
線音源のメリット
- 距離による音の減衰が小さい。(点音源の半分)
- 天井や壁からの反射が少なく、明瞭な拡声が可能。
- 点音源に比べ小さな音で遠方に届くため、ハウリングを起こしにくい。また、ひとつあたりの音源ユニットの音量が小さいのでスピーカーに近接してもハ ウリングが起こりにくい。
- スピーカーの垂直方向への音の広がりが抑えられているため、狙ったエリアに明瞭に音を届けることができます。
ラインアレイ効果は永遠に続くの?
ラインアレイスピーカーは、従来のスピーカーでは拡声の難しかった音響条件の悪い空間(体育館や講堂、アリーナ、教会など)でも高品位なサウンドを提供することができます。しかし、その垂直方向の指向性制御には限界があり、ある一定の距離を越えると理想的なラインアレイ効果がなくなり、点音源スピーカーと同じ特性になります。そこで、次ではその「有効距離」についてご説明していきます。
ラインアレイスピーカーの有効距離
線音源であるラインアレイスピーカーの特長は、垂直方向に音が広がらないことですが、その指向性を維持するエリアには限度があり、その有効距離を超えたエリアでは点音源のスピーカーと同じように上下左右に音が広がりながら伝播するようになります。線音源の有効距離は、下記のように線音源の長さと周波数により計算できます。
線音源の有効距離を計算しよう
ラインアレイが指向性制御を実現できるエリアは周波数を一定とすると、線音源の長さによって決まります。 よって、ラインアレイの有効距離はスピーカーの長さと周波数を下記の数式に当てはめることで計算できます。 実際の場所や状況により、音を明瞭に届けたいエリアは様々。具体的にどの程度の長さのラインアレイスピーカーを何本連結すれば、どれだけの有効距離が得られるかが分かれば、現場に合わせて理想的な音場を実現できます。
表のデータを図示するとこのようになります。
type S(線長=90cm)の場合、1本のみですとスピーカーの長さが90cmですので有効距離は2KHzで2.3mまでですが、2本を連結すると長さが180cmになりますので有効距離は同帯域で9.3mまで長くなります。さらに3連結で270cmの線音源を構成すると、有効範囲は21mまで長く取ることが可能になります。