音声のネットワーク伝送について
近年、著しい普及が進むネットワーク網の整備。
従来、アナログ伝送が主流だった電話や拡声放送などの音声信号の伝送に関しても、ネットワークを介して伝送する場面が多く見られるようになってきました。
今回は、音声のネットワーク伝送について解説します。
音声のアナログ伝送
音は、空気という媒体の中を振動となって進む疎密波であり、池に石を投げ入れると水面に波紋が広がっていくように伝わります。人はこれを「音」として聴くことができます。
空気の振動として伝わった音をそのまま電気信号に変換したものがアナログ信号です。アナログ信号は、大まかにいうと、振幅が音の大きさを、波長が音の高さを表します。アナログ信号は連続的な信号となり、音声が伝送されます。
アナログ伝送では、音声をアナログ信号に変換して伝送路へ送出し、受信したアナログ信号を音声に戻すことで送られた音声を聞くことができます。
音声のネットワーク伝送
ネットワーク経由で音声をやりとりするためには、通常のアナログ信号を「音声パケット」という形に変える必要があります。パケットという言葉を聞くと、携帯電話の「パケット通信」を思い浮かべる人も多いでしょう。この技術は、IP電話や、後述のパケットオーディオ技術でも採用されています。
通常の電話等で送受信している信号は、音声をそのまま電気信号に変換したアナログ信号です。IP電話等のネットワークを利用した音声伝送では、音声を電気信号に変換したアナログ信号をさらに、デジタル信号に変換し、次に小分けしていきます。この小分けされたデータが「音声パケット」です。「音声パケット」は送信側からネットワークに送出されます。
受信側は「音声パケット」を受信し、小分けされたデジタル信号をつなぎ合わせてアナログ信号に戻します。さらに音声に戻すことで送られた音声を聞くことができます。
デジタル信号は外部からの雑音などの影響を受けにくいため、元音声波形の再現性に優れ、音質を劣化させることもありません。
しかし、ネットワークに流れている他のデータ量が多い場合にパケットの到達に時間が掛かったり、デジタル化やパケット化の処理を伴う分、アナログ伝送と比べて遅延が生じることや、最悪の場合はパケットの一部が欠落することもあり、通話や拡声放送に支障を来たす場合もあります。
TOAのネットワーク音声伝送
TOA独自のネットワーク音声伝送技術「パケットオーディオ」を搭載した製品、ネットワークオーディオアダプター、IP告知放送システム、パケットインターカムシステムでは、ネットワークを介して音声を伝送し、拡声放送や通話を行えます。
パケットオーディオの特徴
- リアルタイム伝送 遅延の少ない音声の送受信が可能。
- 高音質伝送 原音の波形を忠実に実現する音声圧縮方式により高品質な音声の送受信が可能。
- 低コスト 既存の構内LANや社内イントラネット、地域ネットワーク網などのネットワークを経由して放送・通話できるので、配線工事費や通話料などの放置コスト・運用コストの低減が可能。
- パケット欠落補正機能搭載 使用するネットワークの状態によってはパケットが欠落する場合があります。「パケットオーディオ」では、欠落したパケットの補正処理を以下の3つの方式から選択して行えます。
※パケット欠落補正方式を選択できるのはネットワークオーディオアダプターのみです。IP告知放送システムとパケットインターカムシステムは「標準」方式に固定されており「エラー訂正」「再送」には設定できません。
音声のアナログ伝送
欠落したパケットを無音で補正します。パケット欠落の多い通信が不安定なネットワークでは音声品質が保てないため不向きですが、遅延時間および使用帯域が最も小さく、リアルタイム性を重視したアプリケーションに適しています。
「エラー訂正」方式
欠落したパケットを冗長データを用いて復元します。短時間の欠落しか補正することができないため、パケット欠落の多い通信が不安定なネットワークでは不向きですが、LANなどのパケット欠落が少ないネットワークにおいて、高い音声品質を求められるアプリケーションに適しています。
「再送」方式
欠落したパケットを自動的に再送して補正します。遅延時間が大きいため、リアルタイム性を重視したアプリケーションには不向きですが、遅延時間の設定値内のパケット欠落であれば、すべて補正することが可能です。インターネットなど、パケット欠落の多い通信が不安定なネットワークでも高い音声品質を保つことができます。
パケット欠落補正能力 | リアルタイム性 | 帯域使用量 | |
---|---|---|---|
標準 | △ | ◎ | 小 |
エラー訂正 | ◯ | ◯ | 中 |
再送 | ◎ | △ | 大 |
※記号はの順に優位性を表しています。
近年におけるネットワークの普及に伴い、音声伝送に関してもネットワークを利用する場面が多くなっていくことでしょう。