音が聞こえるってどういうこと?
音は人間が感じ取るものであり、それが音というものの本質を複雑なものにしているとも言えます。私たちが聞こえたと感じているものと、実際の現象はまったく違っていることもあるからです。
物理現象としての音を、私たちが音として聞くまでの3つの段階について、簡単に説明しましょう。
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- 物理的レベルでの認識
- 音そのものは空気の振動であり、物理現象として計測可能なものです。これは物理現象ですから、騒音計などで測定することができるものであり、Hz(ヘルツ)という周波数の単位や、dB(デシベル)という音圧レベルの単位で客観的に表現することができるものです。
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- 生理的レベルでの認識
- 空気の振動が私たちの耳に届き、鼓膜を振動させます。この振動が、耳の複雑かつ巧みな構造によって神経信号に変換されます。つまり、物理的な音を、脳で処理するための神経信号というフォーマットに変換する作業を、耳という器官が担っているといえます。
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- 心理的レベルでの認識
- 神経信号として伝わってきた音を脳が認識します。ここでは非常に高度で複雑な情報処理がおこなわれているものの、未だその内容については解明されていない部分が多々あります。いずれにしてもこの段階で初めて、単なる空気の振動だった音は、意味のある音として認識されるのです。
普段私たちが何気なく「音が聞こえる」と感じたときも、このような複雑なプロセスを経て音を認識しているのです。
カクテルパーティー効果 〜雑音の中から音を選び取る〜
私たちが音を聞いているときに、いかに心理的レベルの認識が大きな要素を占めているかがわかる現象に、カクテルパーティー効果と呼ばれるものがあります。
多くの人の声でざわめいている立食パーティーの会場でも、私たちは隣の人と普通に会話ができますし、注意して耳をすませば、少し離れたところのヒソヒソ話まで聞くことができます。これをカクテルパーティー効果といいます。
こういう状況をテープレコーダー等で録音して後で聞き返してみると、ざわめきと騒音ばかりで、誰が何を話しているのかさっぱりわかりません。実際には私たちの耳もテープレコーダーと同じように、周りの人々の声やざわめきすべてを空気の振動として受け入れているはずです。にもかかわらず、聞きたい音だけを選び取って聞くことができるのは、「耳からの情報を脳が処理する際に特定の音源の音を選別処理をする能力」によるものと考えられています。つまり心理的レベルの認識による処理によって、聞きたい音を選び取っているといえるでしょう。
近年、聴覚系の情報処理だけでなく他の感覚からの情報をも統合的に脳が情報処理することにより、カクテルパーティー効果がおこっていることも明らかになっています。例えば、視覚情報によって、10m離れたところに見える人の口元の動きなどから、聴覚系に情報がフィードバックされたり、10mという距離感からそれくらい離れた距離感の音だけを抽出しているという高度な処理過程が存在しています。