耳肥ゆる秋
昔から日本人は、自然の静寂の中に響く心地よい音を創り出す名人だったようだ。
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昔から日本人は、自然の静寂の中に響く心地よい音を創り出す名人だったようだ。
能舞台の床下には、無数の瓶が埋め込まれ、残響音を高める工夫がされている。また、コンサートホールや劇場も「音」をより理想的な響きにする空間を追求し、様々な工夫がなされてきた。昔から人は「音」を欲し、「音」をより効果的に聞くことのできる、音空間を追い求めているのではないだろうか。
中世の面影をとどめている街は、どこか音に敏感な感性をもたらしてくれる。南仏のディーニュという街には、昔から人々と生きてきた鐘がある。時折そっけなく鳴り出すその音色は、まるで街中に波紋が広がるように天上の音楽の響きがする。これが中世の音風景に違いない。
茶室という小さな宇宙は、母親の胎内のような心やすらぐ空間になっている。ここでは、視覚より聴覚が優先して、ドラマが進行していく。
学校やオフィス、街のどこかで、時を告げるチャイムや時報が聞こえてくる。それは時刻を知らせる音としてだけでなく、人々が共有する、時の始まりと終りを告げる節目の音でもある。
祇園の石畳に、舞妓さんのぽっくりが響く。 ぽっくりは少女の盛装のげた。江戸時代に吉原遊郭の"かむろ"が用いたのが始まりといわれる。