よく晴れた日に建物の内側から入り口を見ると、逆光によって背景が明るすぎて、立っている人物がはっきり見えないということがありませんか?
カメラの映像も同じで、通常、カメラでそのような場所を映すと、明るい部分が白くとんでしまったり、暗い部分が黒く潰れてしまったりすることがあり、逆光や西日、照り返しの影響を受ける出入り口などでは監視が困難でした。
ワイドダイナミックレンジ機能は、そうした問題を解消。ひとつの映像の中で明暗差が大きな場所でも、モニター上に映し出される映像の明るい場所と暗い場所の両方を、はっきりそして自然な状態で見ることができます。
WDRとは、Wide Dynamic Rangeの略で、ダイナミックレンジが広いことをいいます。
ダイナミックレンジは、明るいところと暗いところの照度比の対数をとったもので、単位はdB(デシベル)で表します。この値が大きいほど、より大きな明暗差をはっきりと映すことができます。
ダイナミックレンジの値は、ダイナミックレンジ値[dB]=20log10(明るいところの照度/暗いところの照度)で算出します。
たとえば、晴天の屋外の照度が100,000[lx]、会議室の照度が700[lx]であるとすると、ダイナミックレンジ値は、 20log10(100,000÷700)=43.1[dB] となります。
では、100,000[lx]の晴天の屋外と700[lx]の会議室の両方を同一画面内ではっきりと自然な状態で見たい場合、どのようなカメラを選択すれば良いのでしょうか?
カメラの仕様における“ダイナミックレンジ”とは、通常、撮影可能なダイナミックレンジ値のことを指しますので、その値が43.1[dB]を超えるカメラを選択すればいいということになります。
TOAでは広いダイナミックレンジの被写体でも自然な状態で撮影できるカメラを、ワイドダイナミックカメラと呼んでいます。
TOAのワイドダイナミックカメラは、明暗差が大きい被写体を鮮明に映すために、専用DSP(デジタル画像信号処理回路)を搭載。この専用DSPが独自の画像合成を行うことで、対応可能なダイナミックレンジを拡大。画像を大幅に改善することができました。
ワイドダイナミック(WDR)機能のないカメラは、通常、1/60秒ごとにシャッターを切って、絵を作っています。
WDR機能付のカメラは、1/120秒ごとにシャッターを切り、WDR機能のないカメラが1枚の絵を作っている時間に、2枚の絵を作っています。(図1)
この2枚の絵のうち、1枚は明るい被写体に対して最適なシャッタースピードで撮影します。暗い被写体は黒くつぶれてしまいますが、明るい被写体は鮮明に映すことができます。(写真1)
もう1枚は暗い被写体に対して最適なシャッタースピードで撮影します。明るい被写体に対して撮影したときよりも露光時間が長くなりますので、明るい被写体は白くとんでしまいますが、暗い被写体は鮮明に映すことができます。(写真2)
このように明るい部分を補正した1枚目の絵と、暗い部分を補正した2枚目の絵を、デジタル信号処理で合成することで、明るい被写体も暗い被写体も鮮明に見ることができるようになります。ほとんど同時に撮影・合成していますので、画像がぶれてぼやけてしまうことはありません。(写真3)